Research Abstract |
炭素繊維強化複合材料のクリープ挙動を調べるため,一方向T800H/Epoxy#3631に対して100℃で一定応力クリープ試験とこれに続くクリープ回復試験を行った.これらのクリープ試験は,繊維配向角θ=0°,10°,30°,45°,90°の平滑な非主軸試験片を用い,3種類の応力レベルについて実施した.これらの結果に基づいて,一方向T800H/Epoxy#3631のクリープ挙動に及ぼす負荷応力と繊維配向角の影響を明らかにした.回復クリープ挙動に関しては,応力変動と先行クリープの影響を調べた.最後に,非主軸クリープ挙動を定式化するための準備として,Sun-Chenモデルの相当応力と相当非弾性ひずみを取り上げ,これらの非主軸クリープ挙動に対する有効性を検討した.これまでに得られた主な結果をまとめると以下のようになる. (1) 荷重を一定値に保持した後に荷重方向に時間とともに現れるクリープ変形は,繊維方向(θ=0°)を含むすべての繊維配向角に対して観察することができる. (2) すべての繊維配向角θに対して,試験片長手方向に生じるクリープひずみε^c_θはクリープ応力σが大きいほど大きくなる.また,いずれの繊維配向角およびクリープ応力に対しても,クリープ速度は時間とともに急激に低下して0に近づく傾向を示す. (3) いずれの繊維配向角θに対しても短時間領域において,クリープひずみは時間と作用応力のべき乗に比例し,ε^c_θ=K(θ)t^mσ^nと表現することができる.ここで,m=0.43,n=2.0. (4) 高分子クリープの記述に使われるクリープコンプライアンスJ(=ε^c_θ/σ)を複合材料に対して適用した場合,上記(3)の結果から,J=K(θ)t^mσと表現することができる. (5) 繊維配向角に依存する異方的なクリープ挙動に対して一般的な構成モデルを定式化するためには,この異方性を吸収して一つのマスタクリープ挙動を規定するような相当応力と相当クリープひずみを導入するのが合理的である.このための準備として,使用した材料の非主軸引張変形に対して有効性が示されているSun-Chenの一変数モデルにおける相当量を取り上げ,非主軸クリープ挙動への適用性を調べた.このため,異なる繊維配向角に対してSun-Chenの相当応力が等しい条件でクリープ試験を行った.これらの結果から求めた異なる繊維配向角に対する相当クリープ曲線を比較したところ十分な一致が見られなかった.したがって,一方向CFRPの非主軸クリープ挙動を統一的に記述するためには,さらに一般的な相当量を定義する必要がある. (6) クリープ応力を完全に除荷した後に時間とともに生じる回復クリープひずみは,先行クリープひずみよりも小さい.したがって,先行クリープひずみは除荷によって完全には回復しない.この観察結果は,用いた一方向CFRPの時間依存挙動に粘塑性的な特徴が含まれていることを意味する. (7) クリープ回復は先行クリープ応力が大きいほど著しくなる.回復クリープ速度は急激に小さくなり,繊維配向角と先行クリープにかかわらず0に近づく傾向を示す.このような回復クリープ挙動は,全体的には,先行クリープ挙動に類似した特徴を示す.
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