1998 Fiscal Year Annual Research Report
インテリジェントマテリアルのマイクロメカニックス解析
Project/Area Number |
10650087
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
荒木 栄敏 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (60222741)
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Keywords | インテリジェントマテリアル / 知的材料 / マイクロメカニックス / 介在物 / 形状記憶合金 / TiNi繊維 / き裂閉鎖 / じん性 |
Research Abstract |
本年度においては,インテリジェントマテリアルのマイクロメカニックス解析の第1段階として,形状記憶効果を有するTiNi合金を一方向連続繊維として用いたインテリジェントマテリアルのモデル化と解析を行うことを目的とした.予め引張予ひずみが与えられたTiNi繊維をエポキシ母材中に一方向に埋め込んだ材料が負荷を受けてき裂が生じている状態を想定する.TiNi繊維をオーステナイト逆変態温度まで加熱して形状記憶効果を発露させ,これを収縮させることによってき裂を閉鎖させることが可能であり,これを確認する実験がTayaらによって行われている.本研究では,TiNi繊維に与えられた予ひずみを固有ひずみで表し,繊維を不均質介在物として取り扱うことでこれをモデル化した.また,繊維がき裂を閉鎖する効果を検討するために,繊維がき裂を架橋している状態を想定した.このモデルをマイクロメカニックスの1つである等価介在物法を用いて解析することによって,き裂のエネルギー解放率と応力拡大係数を求めた.さらに,き裂進展条件を定式化し,繊維の収縮によってき裂の進展が停止するときの臨界き裂長さを用いて靭性を評価した.その結果,TiNi繊維の収縮によってき裂の応力拡大係数が減少することがわかった.これはTayaらの実験結果と定性的に一致した.また,TiNi繊維を収縮させるために必要な加熱・冷却過程における靭性の変化を求めた結果,最終的に常温に戻って繊維が収縮した状態では靭性が向上することがわかったが,オーステナイト変態点以上の加熱課程においては靭性の低下が見られた.これはTiNi繊維の弾性係数の低下に起因するものであると思われる.今年度の解析によってTiNi繊維の形状記憶効果をうまくモデル化することができたため,次年度では,さらに炭素繊維を加えることでCFRPにおけるインテリジェントマテリアルの可能性を探ることを課題とする.
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