Research Abstract |
資源,コスト低減,性質向上および環境調和などの観点から,材料の表面改質に関する研究は窒化,浸炭,高周波焼き入れなど,古くから取り組まれている.近年では,CVD,PVDなどによる表即コーテイングやイオン注入など,種々の目的にあわせた新技術が多方面で実用化されている.一方,各種材料は使用条件の多様化にともない,高性能が要求されるようになってきたが,材料の開発には限度がある.そこで,材料表面をより高性質を有する状態に創製することが要求されるようになってきた.本研究ではその要求を満たす一つとして,ハイブリッド表面改質を提案し,その詳細について研究を展開する.初年度はハイブリッド表面改質法として,真空浸炭処理を施したSCM415材表面に,超微粒子ピーニングを行う方法を採用し,表面改質後の疲労強度,き裂発生寿命,き裂進展寿命などから表面改質後の信頼性を評価することを目的とした.初年度に実施した研究で得られた主な結果を以下に要約する. (1) 真空浸炭処理後,超微粒子ピーニングを施したSCM415表面層には,厚さ約10μmの腐食されにくい組織変化層が観察され,この層の硬度はHV1250,圧縮残留応力は-2850MPaであった.また,超微粒子ピーニングを施すことにより,引張強さは10%程度向上し,疲労限度は調質材(500MPa)と比較して1.6倍(800MPa)の上昇,真空浸炭処理材(600MPa)と比較しても約1.4倍の上昇が認められた.なお,真空浸炭処理後,超微粒子ピーニングを施した場合の破壊はすべてフイシュアイ型であった. (2) 疲労き裂進展試験の結果,超微粒子ピーニングは主にき裂発生寿命の向上に効果的であり,真空浸炭処理は疲労き裂進展速度を低減させることが明らかとなった. (3) 破損寿命としては,真空浸炭処理後,超微粒子ピーニングを施した場合,最も長寿命となる. (4) その他,応力拡大係数幅ΔK,有効応力拡大係数幅ΔK_<eff>とき裂進展速度da/dNの関係などについて明らかにした.
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