2000 Fiscal Year Annual Research Report
繊維強化アルミニウム系複合材料の熱的寸法安定性と残留応力
Project/Area Number |
10650107
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Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
池内 保一 新居浜工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (20044092)
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Keywords | 繊維強化金属 / アルミナ繊維 / アルミニウム合金 / 熱膨張 / ヒステリシス / 熱残留応力 / X線応力測定 / 複合材料 |
Research Abstract |
繊維強化金属基複合材料は高温比強度・比剛性の大きい構造用材料としてのみならず熱膨張率などの特性が調製できる機能性材料として注目されその実用化が期待されている。これら繊維強化金属基複合材料では,繊維と母材の熱膨張差に起因して生じる熱残留応力は複合材料の熱膨張・収縮におけるヒステリシス現象や寸法不安定の原因となることが指摘されており,熱残留応力と熱膨張の関係を明らかにすることが重要である。 平均直径20μmのα-Al_2O_3長繊維で強化したAl-2mass%Li合金複合材料の繊維と母材の両相についてその残留応力状態を室温でX線3軸応力解析すると共に室温近くで温度変化に伴う複合材料の残留応力変化を通常のsin^2ψ法でX線その場測定した。温度変化に伴う残留応力変化は弾性論による理論予測とよく一致する。本実験で測定した残留応力は繊維と母材の熱膨張差に起因する残留応力であり,繊維方向の応力は最大主応力である。残留応力は熱履歴の相違によって符号と大きさが変化する。繊維方向および繊維横方向ともに,繊維と母材は両相間で応力の釣合条件を満たす。 平均直径17μmのγ-Al_2O_3長繊維で強化したAl-5mass%Cu合金複合材料の室温から527℃までの熱履歴過程における繊維方向の熱膨張挙動を熱残留応力の立場から実験的に解析した。複合材料では繊維と母材の熱膨張に両相の機械的変形が重畳して膨張する。室温から527℃までの熱サイクル過程で本複合材料では,母材が純Alの場合に比べて,複雑なヒステリシスループを示す。本研究では,複合材料と繊維の熱膨張差から,複合材料中に生じる繊維方向の熱応力を応力の釣合条件と一次近似によるひずみの適合条件から算出し,複合材料の熱サイクル過程における母材の変形挙動を考察した。熱サイクル過程で母材は複雑な塑性変形を示す。高温から室温まで冷却された試料の再加熱過程では,母材の大きな引張残留応力は繊維と母材の弾性変形で応力ゼロレベルへと除荷されるが母材は圧縮変形初期に降伏してバウシンガー効果を示す。熱膨張測定は熱履歴過程における複合材料中での母材のその場変形挙動を知り得る簡便な手法である。
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[Publications] Yasukazu IKEUCHI: "Effect of Residual Stresses on Thermal Expansion of Continuous Alumina Fiber-Reinforced Aluminum"The Sixth International Conference on Residual Stresses. Vol.2. 1291-1298 (2000)
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[Publications] 池内保一: "α-アルミナ長繊維強化アルミニウムのX線残留応力測定"第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集. 320-325 (2000)
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[Publications] 池内保一: "熱処理および温度変化過程におけるSiC長繊維強化6061Al合金複合材料のX線残留応力評価"材料. 50巻1号. 76-82 (2001)