1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10650184
|
Research Institution | TOKYO METOROPOLITAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水沼 博 東京都立大学, 工学研究科, 助教授 (20117724)
|
Keywords | 遠心形血液ポンプ / 溶血 / 赤血球 / レオスコープ / 流れの可視化 / 熱線流速計 |
Research Abstract |
遠心形血液ポンプ内の溶血を低減するには、ポンプ内部の流れがどのようになっているかを理解すると共に、赤血球がなぜ機械的損傷を受けるかを明らかにすることが必要である。本研究では、これまでに試作した円錐・平板型のレオスコープを利用し、定常なせん断流中で生ずる溶血を調べ、高いずり速度ほど早い速度で溶血が進行することを示した。また、赤血球の変形挙動を円錐・平板間の定常的なずり流れと平行平板間の非定常的な振動流中において測定し、その変形挙動と、それに及ぼす非定常性の影響について調べた。その結果、赤血球の変形は約100Pa程度のせん断応力値を超えると表面積の増加を示すようになり、降伏現象に類似な現象を示すことを明らかにした。非定常流においては、従来マイクロピペットによる吸引の実験で10msのオーダーの変形の遅延が報告されているが、ここで行った600Hzまでの非定常流れに対して1ms程度の高速な流れの変化にも定常流とほぼ同様な変形を示した。 ポンプ内部の流れを調べるため、インク流脈及びトレーサー粒子流跡による流れの可視化を行い、ポンプ内部は一部に半径方向の逆流を含む複雑な流れとなっていることを明らかにした。さらに定量的な結果を得るためポンプケーシングカバーに埋め込み形のホットフィルムを取り付け、壁面せん断応力分布の動的計測をおこなった。その結果、ケーシングカバー上の壁面せん断応力はポンプ回転数にほぼ比例して高くなり、回転数一定の場合には羽根間よりも羽根通過時に高い値を示すことがわかった。回転数3000rpmのときには最大800Paの壁面せん断応力が測定された。このような高いずり応力は壁面近傍の薄い境界層内にのみ生ずると思われるが、そこを通過する赤血球は定常流に対すると同じように大きな変形を示し、溶血に到る可能性が高い。このような境界層に対する設計上の工夫が重要と推測される。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 水沼 博,上田耕一: "高ずり流れにおける赤血球の変形と溶血"日本機械学会年次大会講演論文集. 99・1. 1-2 (1999)
-
[Publications] 水沼 博,中嶋 亮: "壁面埋め込み形熱膜プローブによる血液ポンプ内のずり応力分布の測定"日本機械学会年次大学講演論文集. (発表予定). (2000)