Research Abstract |
本年度の研究は,ほぼ当初の計画通りに進行している.研究成果が得られるとともに,いくつかの本質的な課題が明らかになった.まず,上腕のジェネリックな筋骨格モデルを構築するとともに,個人に適合した筋骨格モデルを簡単に構築する手法を検討した.個人に適合したモデルを構築するためには,上腕の寸法や関節の回転中心など,運動学パラメータが必要である.本課題では,事前の標準運動から個人の運動学パラメータを推定する手法を提案し,3次元位置センサを用いて実験を行った.標準運動としては,肩,肘,手首関節まわりの回転運動9種類を選んだ.実験の結果,肩の3自由度,肘の1自由度に関する運動学パラメータを精度良く推定できることがわかった.しかし,手首3自由度に関しては,運動範囲が小さいことから,精度良く推定することは困難であった.したがって,手首3自由度に関しては,3次元ゴニオメータ等を用いる計測が必要と考える.手指部に関しても同様である.次に,新規に購入した筋電アンプ,AD変換ボード,パーソナルコンピュータにより,筋電位の計測装置を構成し,筋力の推定を試みた.その結果,筋電位の絶対値の時間積分平均が,負荷と一次関数の関係にあることを確認した.しかし,筋電位の計測位置や皮膚の状態によって,積分平均と負荷との関係式が変動するため,運動学パラメータの推定と同様に,事前の標準運動を通して,筋電位に関するパラメータを推定する必要がある.複数箇所における筋電位の計測を通して,いくつかの主要な筋の筋力を推定する手法に関しても,さらなる検討が必要である.
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