Research Abstract |
本研究では,上肢運動の計測を通して上肢リンクモデルを構築する手法を提案し,個人に適合した上肢リンクモデルの構築を行う.上肢運動の計測には,三次元位置センサとフレキシブル関節角度計を用いる.まず,上腕部をリンクモデルで表し,モデルパラメータを推定する手法を確立した.三次元位置センサの取り付け位置を補正し,リンクモデルにおいて個体差を考慮するために,事前運動を行い,その計測値からリンクモデルのパラメータを推定する.上肢が外転運動をする際には,肩甲骨の運動が加わり,手先の運動を円弧で表すことができない.そこで,上肢の外転運動に対応する自由度を表すために,2リンク1自由度メカニズムを導入する.上肢の屈曲運動,前腕の屈曲運動は,1自由度回転関節で表現する.上肢外転,上肢屈曲,前腕屈曲に対応する事前運動を行い,その計測値からモデルパラメータ,すなわち,肩関節の中心位置,2リンク1自由度メカニズムにおけるリンク長と二つの関節角度間の関係式,肘関節の中心位置,前腕長を同定する.上肢の外転運動を一つの関節で表している場合,手先の向きが計測値と異なっていたが,2リンク1自由度メカニズムを用いることにより,手先の位置と向きを上肢モデルで正確に表せることが示された.次に,手首の3自由度運動を計測することを目的に,フレキシブル関節角度計を試作した.手首運動は範囲が狭く,手先の位置や姿勢を計測してモデルパラメータを同定するには,三次元位置センサの精度では不十分である.そこで,歪ゲージを用いた角度計を製作し,手首運動を精度良く計測する.角度計を試作し,計測値を評価したところ,計測角度が50度以下の場合は十分な精度を有するが,50度以上では誤差が大きいことがわかった.以上のように,手首部のパラメータ推定に課題が残るが,事前運動を通して上肢リンクモデルを構築する手法の実現性を確認できた.
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