1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10650416
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Research Institution | TOYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井内 徹 東洋大学, 工学部, 教授 (20232142)
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Keywords | 放射率 / 偏光 / 散乱 / 吸収 / 光学定数 / 薄膜 / 表面粗さ / 干渉 |
Research Abstract |
鋼板など金属や半導体表面に酸化膜が成長する過程における放射率挙動,すなわち方向特性と偏光特性の変化を表すモデルとして既存理論の適用範囲の再確認すると共に,新たに表面粗さを含む諸パラメータを統括して表現する実効的光学定数の概念を導入してモデル化した.これらをまとめると, 実用金属の放射率は,5μm以上の長波長ではHagen-Rubensの公式でほぼ表現できる.ただし,短波長での実測値はこの公式より高い値を示す.この限界は理論式の仮定からのずれと表面粗さなどの要因によるものと考えられる.金属面に生成する酸化膜によって生じる放射率変化は導電体である下地の金属と誘電体である酸化膜からなる2層薄膜間の放射の取り扱いで説明することができる.この理想的なモデルで解析すると,方向特性,偏光特性の大部分の現象を把握することができる.この条件下では,放射率の変化が周期的な振動現象となるが,実測の放射率変化は振動的であるが,最終的に一定値に収斂する.この現象を説明するには酸化膜が複素屈折率を有することで解決できる.金属が光学的に滑らかでない状態でも,薄膜の理論を適用するためには,表面粗さや酸化膜の不均質さを等価的に均質な膜とみなして展開するEMT(Effective Medium Theory)モデルにより,実効的光学定数を用いることによって,実用に近いモデル化が可能である.実効的光学定数を測定するには,エリプソメトリを利用できる. 本手法で残された問題は,実効的光学定数の概念が表面粗さを含む諸要素との絡みでどこまで有効に作用するのか限界を調べる必要がある.放射率モデルのもう一つの問題点は,放射率の測定は放射輝度を計測によってなされるが,常温で得られる光学定数の温度特性,あるいは加熱中に試料自体の表面状態が変化するためにモデルとの定量的な比較検討・評価である.
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[Publications] 井内徹、鶴川屋智之、田添晃: "分光放射輝度の方向依存性を利用した放射率放射補正放射測温法"計測自動制御学会論文集. 34・3. 175-181 (1998)
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[Publications] T. Iuchi, T. Furukawa, T. Tsurukawaya A. Tazoe and T. Hoshino: "Emissiuity comepensated vadiation thermometry of matal using directional radiance"Proc, of APC CM'98. 417-421 (1998)
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[Publications] 井内徹、星野智宏、古川徹、田添晃: "金属の酸化時の偏光特性と放射率補正放射測温への応用"計測自動制御学会論文集. 35・7. 832-839 (1999)
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[Publications] T. Furukawa and T, Iuchi: "Developnent of a gonio-photometer for measuring surface roughness and temperature"Proc. of 15th IMEKO. 9. 55-62 (1999)
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[Publications] T. Iuchi and T. Furukawa: "Directional and polariged emissivities of metals suring oxidation and their use in pyronetry"Proc, of TEMPMEKO'99. 669-674 (1999)
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[Publications] 井内徹、石井啓貴: "偏光輝度を利用した常温付近における光沢金属の放射測温法"計測自動制御学会論文集. (掲載予定). (2000)
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[Publications] T. Iuchi and T. Furukawa: "Emissivity-compensated radiation thermometry"Proc. of 16th IMEKO. (掲載予定). (2000)
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[Publications] 井内徹: "放射シミュレーションの構成についての考え方"日本鉄鋼協会 第2回鋼板表面の光学的特性モデリング研究会. (1998)
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[Publications] 石井啓貴、鈴木裕次、山田光男、井内徹: "偏光を利用した常温における金属の放射測温法"第45回応用物理学関係連合講演会. a-ZD-2. (1998)
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[Publications] 石井啓貴、鈴木裕次、井内徹: "偏光輝度を利用した金属の常温付近における放射測温法"第37回計測自動制御学会学術講演会. 108C-4. 143-144 (1998)
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[Publications] 星野智宏、田添晃、井内徹: "実用化へ向けた放射率補正放射測温法の開発"第45回応用物理学関係連合講演会. a-ZD-2. (1998)
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[Publications] 星野智宏、田添晃、井内徹: "放射率補正放射測温法における金属放射率変化の挙動解析"第37回計測自動制御学会学術講演会. 108c-5. 145-146 (1998)
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[Publications] 古川徹、井内徹: "試作ゴニオフォトメータによる表面粗さの測定"'98精密工学会秋期大会. 496 (1998)
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[Publications] 古川徹、井内徹: "ゴニオフォトメータによる金属の反射率測定とその応用"第15回センシングフォーラム. 127-130 (1998)
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[Publications] 古川徹、星野智宏、井内徹: "全放射計による放射率補正放射測温法"第38回計測自動制御学会学術講演会. 105A-1. 109-110 (1999)
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[Publications] 古川徹、井内徹: "干渉効果を回避した放射測温法"第16回センシングフォーム. 301-306 (1999)
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[Publications] 井内徹: "放射率シミュレーション"日本鉄鋼協会 第6回鋼板表面の光学的特性モデリング研究会. 1-11 (2000)