1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10650507
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大久保 賢治 岡山大学, 環境理工学部, 助教授 (50135612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 芳朗 岡山大学, 環境理工学部, 助教授 (50152541)
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Keywords | 瀬戸内海 / 陸水起源 / 水塊構造 / 熱塩成層 / 対流循環 / 浮遊懸濁物 / 植物プランクトン / 溶存酸素 |
Research Abstract |
岡山県南東部の瀬戸内海、播磨灘北西端の日生海域で陸水起源の水塊形成とその季節変化を5回の現地観測で明らかにした。日生諸島小湾の初夏の水温成層は対流循環により維持され、塩水楔と同様の連行作用で湾内下層水は溶存酸素飽和度がやや低下すること、また湾外は海面浮力束が陸水より数倍大きく潮流の熱輸送の存在が示された。こうして加熱期の水塊は陸水の供給で形成される。すなわち日生・小豆島測線にもみられる夏季水塊構造は塩分成層に支えられた薄い日成層であり(7月)、適度の植物プランクトンが表層水塊の酸素濃度を高め、このことは富栄養化した水域の状況を示している。夏の弱成層は陸水の流出量次第で初秋(9月)には衰退し、ついで現れる冬季水塊構造は海側で高塩分高温、陸側は低塩分低温の弱い熱塩フロント(密度極小)がその境界となる(11・12月)。この境界やや沖側、水深15m付近の海底近傍からは潮流により濁りが発生するが、濁水範囲が底層に限定されることから粗い粒子も浮遊していると考えられる。また溶存態リン濃度なども周囲より若干高い傾向にあるが、クロロフィルはこれよりも陸側(日生側あるいは小豆島北沿岸)に多く、強い流れを回避するものと推測される。1998年は8月中の降雨が少なく内海西部と同様に日生も秋のブルームが懸念されたが、9月後半と10月半ばの台風の影響で塩分が低下かつ一様化(9月)し、深水部は水温逆転層も随所にみられた(10月)。10月観測では珪藻の糸状コワニーにデトライタスと思われる軽量粒子が付着した浮遊物が肉眼で観察され、サイズは小型化したが11月末までこの浮遊物が残留し、クロロフィル鉛直分布にも極めて弱いピークがみられた。以上のよう生物群集の季節変化は海洋生態系のそれとも類似しており、これらのことから類推すれば春季の水塊構造は夏と同様に陸水が表層を沖へ張出し、プランクトンの増殖の一因となると考えられる。
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Research Products
(1 results)