1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10650617
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
畑 聰一 芝浦工業大学, 工学部・建築工学科, 教授 (80104909)
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Keywords | 離島集落 / 共同性 / 再生手法 / ライフサイクル / ライフステージ / 路地 / 3階建住居 / 住まい方 |
Research Abstract |
継続2年目の平成11年度は、前年度のフィールドワークを踏まえ、過去20年に及ぶ5年ごと5回の調査を分析することによって、変容過程の実態などを把握した。すでに答志集落でしかみることのできなくなっていた寝屋制度が、この20年間に、答志においてさえも急速に衰退し、共同生活の基盤さえ危うくなりつつある現状を捉えることができた。このような共同性の衰退とともに、個別化も急速に進んでいる。答志では集落に数人の棟梁がいて、それぞれが得意先をもって特徴ある集落空間をつくってきたが、このような『お大工』と『お得意』で培った共同性や信頼関係がここ5〜10年の間に急速に衰え、本土のプレハブ業者に委託する事例が散見されるようになっている。 このように、本年度は、昨年度の分析作業をさらに推進して、答志の住居・集落空間の経済的な変化と居住意識の変化や、住まい方の変化についての実態把握を行った。好材料もある。答志集落では過去20年の間に3階建住居が漸増したが、この5年間の間に各世代を階で分離する3世代居住なる住まい方を定着させている。これは、新しい大家族居住の仕組みであり、共同性の視点からも評価できる側面である。 このような一連の分析結果を踏まえつつ、本年度は夏と冬の2度、答志集落(サンプリング調査)と答志集落を除く伊勢湾離島7集落の調査を実施した。先述のように共同的な空間や生活が徐々に衰退しているものの、一方では変化しつつ根強く生き残るものもあり、共同性が時間(時代)とともに変化する仕組みが明らかになりつつある。とくに、今年度の調査では、古老への聞き取りを重視したが、年齢差による『共同性』への執着のしかたや共同性そのものに対するとらえ方の違いを浮き彫りにすることができた。このような『共同性』に関する位相をどのように計画手法に反映していくかが、研究最終年度の新たな課題として浮上した。
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