1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代移行期における在方町の空間=社会に関する都市史的研究
Project/Area Number |
10650633
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Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
宮本 雅明 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (80128115)
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Keywords | 在方町 / 都市空間 / 豊後隈町 / 肥前浜町 / 近世・近代移行期 / 町家建築 / 空間=社会 / クライマックス |
Research Abstract |
本研究は、中世社会から近世社会を切り開いた城下町に対し、市場経済社会の実質を担いつつ近世社会から近代社会を切り開いた都市として在方町を日本都市史の中に位置づけるため、近世・近代移行期における在方町の空間=社会が、市場経済社会に適合しつつ地域環境に固有の空間=社会のクライマックスを形成した都市として捉え得ることを実証しようとするもので、都市空間構成が建築空間レベルで把握された全国の在方町を対象として、上記の視点から改めて社会=空間の存在形態に関する包括的検討を行うとともに、都市空間構成が把握されていない個別在方町を選定し、都市空間と都市社会の歴史的分析による社会=空間の存在形態の通時的把握を行うことによって進めている。本年度は、包括的検討の対象地として、九州地方の豊後戸次・四日市、筑後草野、中国地方の美作平福、出雲杵築、伯耆倉吉、備後矢掛を選び、報告書の収集と現地踏査による検討を行った。個別研究の対象地として、豊後隈町と肥前浜町を選定し、文献・絵図史料と地籍・町家遺構資料に基づく建築空間レベルの詳細な検討を通して、都市空間と社会構成の履歴を把握した。近世城下町に起源する隈町では、近世中期以降、天領支配を背景とした経済成長を遂げ、平入りを志向する掛屋有力商人の上質町家建築を核とした格差ある都市構造を呈したが、近代以降は新興商人の妻入りを志向する上質町家建築が建ち、水害を克服しつつ昭和前期に在方町としてのクライマックスを迎えたこと、中世起源の肥前浜宿では、在郷の武家屋敷を核とした近世前期の格差ある都市構造が近世後期に解消され、酒造業と水産加工業の勃興により、近世・近代移行期に町家建築の充実が図られ、昭和前期に在方町としてのクライマックスを迎えたことが明らかとなった。これらの成果を踏まえ、他地方の在方町を交えて包括的検討を行うことが次年度の課題である。
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Research Products
(1 results)