2001 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代移行期における在方町の空間=社会に関する都市史的研究
Project/Area Number |
10650633
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Research Institution | Kyushu Institute of Design |
Principal Investigator |
宮本 雅明 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (80128115)
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Keywords | 在方町 / 近世・近代移行期 / 空間=社会 / 公共性 / ストック型都市景観 / 町家建築 / クライマックス |
Research Abstract |
本研究は、中世社会から近世社会を切り開いた城下町に対し、市場経済社会の実質を担いつつ近世社会から近代社会を切り開いた都市としての在方町を日本都市史の中に位置づけるため、近世・近代移行期における在方町の空間=社会が、市場経済社会に適合しつつ地域環境に固有の空間=社会のクライマックスを形成したことを実証するもので、都市空間構成が把握された全国の在方町を対象として、上記の視点から社会=空間の存在形態を捉え直す包括的検討を行うとともに、都市空間構成が把握されていない在方町を対集として、都市空間と都市社会の覆歴把握による個別研究を蓄積することによって進めてきた。本年度は、前者の対象地として、近畿地方の近江木之本・海津・今津・塩津・長浜・醒ヶ井、北陸地方の若狭熊川、中国地方の因幡智頭・用瀬を選び・現地踏査と資料収集を行うとともに・後者の対象地として九州地方の肥前呼子を選び、文献・絵図史料と地籍・遺構資料に基づく建築空間レベルの詳細な検討を通して、都市空間と社会構成の履歴を把握した。さらに4年間に及ぶ調査研究のとりまとめを行った結果、近世・近代移行期における在方町では、近世初頭における街道整備や元和一国一条令に伴う城下町の廃城によってフラットな都市の空間的基盤が成立し、幕末から明治期にかけて上質の都市建築が次第に建ち並び、昭和初期にはストック型の都市景親を形成し、クライマックスを達成したことを明らかにするとともに、これらの事実に基づいて都市空間の近世史研究を総括し、近世・近代移行期における在方町の空間=社会は、近世初頭に形成されたフラットな都市空間に規定された均一な公共性が展開する都市社会と、土蔵造りや居蔵建ての町家から成るストック型の都市景観が展開する都市空間を成立せしめ、これらを輿台として日本の近世社会から近代社会が切り開かれたことを明らかにした。
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Research Products
(2 results)