1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本の住いの空間的特質とその形成過程に関する研究-壁の空間と柱の空間-
Project/Area Number |
10650635
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 重雄 北海道工業大学, 工学部, 教授 (40175295)
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Keywords | 壁の空間 / 柱の空間 / 住い / 民家 / 日本建築 |
Research Abstract |
今年度の実施した調査研究内容は以下の通りである。 (1)学生4名・大学院生1名の協力の下で実施した四国徳島県・香川県・愛媛県の民家の実測調査、(2)平城宮・太宰府などの古代政庁跡の見学および発掘調査報告書による分析、(3)春日大社・賀茂社をはじめとする奈良平安時代に社殿が整備された神社の見学及び文献資料による儀礼の調査、(4)民家の修理工事報告書をもとにした民家の空間の検討、以上の4点を中心に研究を展開した。 古代政庁や神社建築の検討では、前面を前庭に開放した柱の空間に分類できる建物がいくつもあることを確認した。平城宮・平安宮の大極殿、太宰府政庁正殿、春日大社着到殿、石清水八幡宮神楽殿がコの字型に背面と両側面に壁を巡らし、前面を開放する建物の例であり、春日大社幣殿や賀茂社の橋殿などに4面を完全に開放した空間が確認できる。このうち、春日大社の2殿についてはこれを建具などで囲った例を文献で確認することもできた。これらは柱の空間の初期の例として研究の中で利用してゆきたい。 一方、民家の調査では、四国の民家の中に独特の柱の空間を確認できた。また、民家修理工事報告書を用いて、中世から近世初頭の民家のアイソメ図を作成したが、ここでは中世的な柱の空間と座敷と呼ばれる近世の柱の空間の違いを明確にすることができた。現在、民家の中に見られる中世的な柱の空間の特質とその成立を日本住宅史の中で位置づけられるよう、文献資料の分析を行っている。 本研究は、壁の空間・柱の空間という新しい視点から日本住宅史を見直すための基礎資料の収集を目指すものだが、一連の研究の成果として本年度中にその基礎資料として15枚のアイソメ図を作成することもできた。
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[Publications] 川本重雄: "紫宸殿と清涼殿" 1998年度建築学会大会梗概集. F・2. 53-54 (1998)
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[Publications] 灘本幸子: "春日大社幣殿・着致殿の空間とその空礼" 1998年度建築学会大会梗概集. F・2. 51-52 (1998)
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[Publications] 川本重雄: "大覚寺宸殿について" 国華. 8. (1999)