1998 Fiscal Year Annual Research Report
中近世移行期の都市空間の成立・変容過程に関する研究-伊勢国宇治山田を主な素材として-
Project/Area Number |
10650639
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 裕久 東京理科大学, 工学部・一部・建築学科, 助教授 (20183006)
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Keywords | 伊勢 / 御師(オンシ) / 屋敷形態 / 都市空間構成 / 中近世移行期 / 世古(セコ) / 山田三方(ヤマダサンポウ) |
Research Abstract |
本年度の研究では、伊勢国宇治山田(現三重県伊勢市)の近世絵図および明治〜昭和期の地形図および地籍図を収集・複写し、現状の町並景観や街路調査によって近世段階における都市空間構成の全体的な復原的考察を行った。その結果、近世初期〜後期の都市空間構成の具体的特徴が明らかとなった。また、宇治の館町、山田の宮後町・一之本町等の主要町については近世における屋敷地割レベルまでの復原も可能であった。 さらに、これらの復原図をベースマップとしながら、都市住民の中心を占める御師集団の居住形態について、明治初期に作成された『神宮御師資料』をもとに各町別の分布状況を把握すると共に階層構造などについても分析を加え、『伊勢路見取図』に描かれた御師屋敷の景観等を比定することで、都市空間形成過程と御師屋敷形態との関係を推定した。 その結果、中世からの山田三方(須原方・坂方・岩淵方)における御師の集住形態と町の開発プロセスおよび近世に発展した新興御師の集住形態と町割との関係性の相違点が解明された。すなわち、中世郷村的な集住形態から発展した門前地区の古町では、御師屋敷群は街道から離れて立地しアプローチ路としての自然形成的な世古を多数発生させるのに対し、街道に近接した御師屋敷群の配置および御師屋敷とは無関係な世古よる街区の拡張は、聖域とされた清川(公界堀)の外側に典型的に確認された。そこには中世から近世への移行期における都市空間構成の質的転換をみることができる。
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