1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世寺院における客殿・方丈型本堂の成立と系譜に関する研究
Project/Area Number |
10650642
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
櫻井 敏雄 近畿大学, 理工学部・建築学科, 教授 (60088424)
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Keywords | 客殿 / 方丈 / 法堂 / 講堂 / 方丈型本堂 / 客殿型本堂 |
Research Abstract |
本研究で明らかとなった点の一つは、客殿型・方丈型の本堂の成立を考える場合、それらが徐々に本堂化したと考える立場と、伽藍形態の縮約化、ないし衰退-これは仏教の庶民化と檀越層の各寺院の建立と細密化につながるものと推察されるが-その様相が各宗派、場合によっては地域で異なると推察されたことである。 (1)近世曹洞宗本堂の特徴・・・方丈型 正面入側に土間・広縁付きの八間取りの平面。この伝統は室町時代後期まで遡ると推測され、仏殿・法堂の兼用の堂として法堂とも称されることがある。 (2)浄土宗本堂の特徴・・・本堂型と方丈型がある。 (1)本堂型・・・左右対称で内陣周囲は円柱、大きく内外陣にわかち、脇の間は内陣・位牌の間境に框を入れ建具は開放とし、初期の遺構では片側の位牌の間が通常の部屋となるものがある。 (2)方丈型・・・内陣周囲に円柱を使用せず、脇の間を外陣に加えて凹字型とし、脇の間と内陣・位牌の間境を中敷居として建具を入れ、内陣の閉鎖性を保ち、★物など使用せず客殿ないし書院風なもの。 (1)塔頭方丈型・・・六間取りの上下に位牌壇をつけて発達したとみられるもの。 (2)客殿型・・・対称的な九間取り(内陣は二部屋分を一室とする)で大規模な大書院・客殿を推測させるもの (3)地域型・・・正面入側に土間はないが、八間取りの平面をとるもの。所在地に偏りがある(曹洞宗法堂型)。 (3)日蓮宗寺院本堂の特徴・・・本堂型は中世以来の密教寺院本堂とおなじ平面構成をとり、方丈型が問題となる。 (1)本堂の方丈化・・・近世初頭で本堂型の脇陣を脇の間した様相で、外陣は吹放しとする。中世まで遡る例はない。 (2)方丈型・・・一般的なのは、臨済宗塔頭方丈と類似し、広縁と室中境に桟唐戸を吊る代わりに框を全面に一段高く入れ、蔀戸を吊り、それより内側の二室を内陣として奥行の深いものとする。 (3)法堂型・・・正面入側に土間付きの八間取り平面で、内陣奥行は深く取り、正面に框を入れるもの(曹洞宗法堂型)。 (4)浄土真宗寺院本堂の特質・・・臨済宗塔頭方丈に繋がりそうな真宗本堂の祖型は四間取りで、その性格は慈照寺東求堂や天皇の黒戸に近く、北側の広縁を堂内に取り込む形で拡大化し、成立したことが明らかである。 (5)時宗寺院本堂の特質・・・中世遺構の特徴は内陣を開放して堂内を一体的化し、背面両隅に部屋があり、知恩院勢至堂(旧御影堂)に強い影響を与えたと考えられるが、これに続く遺構がなく、その後の様子は明らかにしえない。
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