1999 Fiscal Year Annual Research Report
近世寺院における客殿・方丈型本堂の成立と系譜に関する研究
Project/Area Number |
10650642
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Research Institution | KINKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
櫻井 敏雄 近畿大学, 理工学部建築学科, 教授 (60088424)
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Keywords | 近世寺院 / 客殿 / 方丈 / 邸宅風本殿 / 書院 / 近世本堂 |
Research Abstract |
平安時代以降、特に中世において大別して二種類の本堂の形態が存在しており、そのうち、邸宅風本堂の系譜は異質・複雑で遺構も少なく、平面形態や空間構成も多様で不明な点が多い。これを明らかにするために、多く残る近世の邸宅風本堂を調査・比較検討し、整理したなかから問題点を引き出し、これまで本堂とは別の性格を持つ建物と考えられていた方丈・書院の遺構をも加え、内仏や仏壇の有無の観点からその成立過程を検討した。 その結果、平安時代、皇族・貴族の子弟が大寺に入寺する過程で、寝殿造や主殿の形式が子院に持ち込まれたが、中門の形式を残しながらそこに内仏をとる過程で正面に三室を形成し六間取りに近い平面をとるように改変されたものと考えられた。そこには整形六間取りの禅宗寺院塔頭方丈の強い影響が推測されると同時に、中門を付ける方式は逆にこうした寺家住房から方丈に影響を与えたものと考えられる。一方向性の空間をもつ主殿造の納戸の位置に内仏・仏間を取ることによって前室は外陣化し、室礼のつく間・次の間の二室と一体となりL字形の矩の手の空間を形成する。四間から六間取りへの移行と前面三室の外陣化は、L字形の矩の手の長い空間構成をもつ客殿本堂の成立を意味する。天台・真言両宗をはじめとして著明な寺院では僧侶の生活の場が僧坊から子院に移り、子院は学侶方と堂衆方に分かれるようになり、学侶方では持仏堂(小御堂)を持つことが許されたために、客殿内に仏壇・仏間がないのに対して、堂衆方の子院では存在する場合が多く四間取り、ないしそれを基本とすることが多い。 浄土宗の方丈型本堂は密教寺院本堂が脇陣を脇の間化することによって成立し、日蓮宗のそれも同様の性格を有するが、室町時代末期から近世初頭にかけて僧侶養成のための檀林が設けられ、その平面が契機となって両者の講堂形本堂が成立し、方丈型本堂として認識されたものと考えられる。
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[Publications] 櫻井、大草、島田: "臨済宗塔頭方丈と曹洞宗本堂について"日本建築学会近畿支部報告集.
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[Publications] 櫻井、島田、大草: "真言宗天台宗寺院の子院客殿について"日本建築学会近畿支部報告集.
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[Publications] 櫻井: "中世真言宗・天台宗寺院の子院客殿について"日本建築学会近畿支部報告集.