Research Abstract |
基材温度変化に伴う溶射粒子偏平挙動変化において,一定の粒子関連因子条件下では,粒子偏平に対し凝固および界面ぬれ性の影響はともに甚大であるが,両因子の影響の支配関係は十分に解明されていない.本来溶射粒子の偏平は,運動し,かつ熱的に非非平衡な動的ぬれ現象であることから,本研究では,溶射粒子の偏平における動的ぬれ挙動ならびにぬれ/凝固両因子の支配関係の実験的解明を試みた. 初年度は,溶射粒子の偏平における動的ぬれ挙動の系統的調査データの蓄積を行い,低熱伝導性であるセラミックス粒子においても粒子は基材衝突時に急速に初期凝固することから偏平に対し凝固の影響が無視できないこと,ただしセラミックス粒子において基材へのぬれの悪い場合には,初期凝固を伴うことなくスプラッシュを発生することから,溶射粒子の偏平現象の最も根幹の影響因子はぬれ性であること,一方,溶射現象を模擬した金属液滴の自由落下実験より,スプラット裏面における多孔質組織は雰囲気ガスの物理的取り込みによる可能性が大きいこと等の諸点を明らかにした. これを受け2年度は,静的ぬれ特性の異なる各種粒子/基材の組合わせに対し,一定条件の粒子関連因子の下で基材温度の変化に伴う粒子偏平挙動を系統的に調査し,偏平に対する動的ぬれの影響の,また金属液滴の自由落下実験における粒子偏平挙動のその場計測等を試み,偏平に対する動的ぬれ性および初期急速凝固の支配関係の解明を試みた. その結果,スプラッシュ状粒子中心円盤部直径が粒子材質には無関係に基材温度の上昇に対応して次第に増大する傾向が認められたこと,また金蒸着膜を施した基材上でセラミックス粒子の偏平において,金膜の存在により初期凝固を伴うことなくスプラッシュ発生が起こること等から,基本的に粒子偏平はぬれに支配される現象であり,基材温度が上昇してぬれが改善され,初期凝固が起こるぬれ環境において初めて凝固が粒子偏平に対し影響を及ぼすようになるとの見解を確立した.なお,本研究では,スプラッシュ発生の評価因子として,従来のスプラッシングパラメタK値に代わる粒子偏平K値を新たに定義・導入し,基材上における粒子偏平は,このK値がある閾値に達した場合にスプラッシュ形態となるとの力学的観点からの新評価法を提案した. 一方,低真空中における自由落下金属液滴偏平挙動のその場計測を行い,雰囲気ガスは基材へのぬれを物理的に阻害する作用を及ぼすこと,基材温度の上昇に伴うぬれ環境の変化は,温度そのものに起因する物理的効果と,基材表面酸化に基づく表面微視構造の変化に起因する化学的効果によること,またその場観察によりスプラット形態の違いに応じて粒子偏平速度は大きく異なり,スプラッシュ状では極めて高い速度で偏平が起こっている等の諸点を明らかにした.
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