1998 Fiscal Year Annual Research Report
極微量元素の多元素同時計測のための分離濃縮法に関する研究
Project/Area Number |
10650791
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤塚 邦彦 北見工業大学, 工学部, 教授 (50003182)
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Keywords | 分離濃縮 / トレース・アナリシス / ICP質量分析法 / キレート試薬 / 共重合体ポリマー |
Research Abstract |
平成10年度は、キレート試薬と疎水性基質を用いる分離濃縮系を検討して新しい系を開発できた。 1, 水溶性キレート試薬である2-(5-Bromo-2-pyridylazo)-5-(N-propyl-N-sulfopropylamino)phenol(以下PAPSと略)を試料溶液に加え、生成した金属キレートを疎水性基質(共重合体ポリマー)に捕集した後、目的金属元素のみを溶離する手法を明らかにして、実際分析へ適用した。すなわち、重金属イオンに対してモル比が5倍以上のPAPSを試料溶液に添加すれば、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、V、Ga等の金属イオンは水溶性錯体を生成し、且つ、この錯体はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体ポリマーへ95%以上の捕集率で捕集される。一方、ICP-MS分析の際に妨害となるアルカリ、アルカリ土類元素はPAPSと錯体を形成せず、カラムに捕集されない故に、本カラム操作により目的元素と分離が可能であった。カラムに捕集された金属錯体は、1M硝酸3ml以上を流すことにより金属イオンのみが溶離され、PAPS試薬はカラムにとどまる。従って、疎水性基質を充填したカラムはPAPS錯体捕集/硝酸溶離の繰り返し使用が可能である。本濃縮法のブランク値(ng)は、0.007±0.003(Cd)から7.8±0.5(Fe)の範囲であり、試料100mlを用いて25倍濃縮の場合の検出限界(3σ)は0.08ppt(Cd)からl6ppt(Fe)であった。本法を海洋水CRM NASS-4の分析へ応用した結果、極微量元素の正確な分析が可能であり、その有用性が確認できた。 2, 確立した系をオンライン濃縮/同位体希釈分析法へと発展させるための基礎的検討に着手した。すなわち、キレート試薬を疎水性基質に担持させる系を設計し、実際に担持カラムを調製して、同カラムの捕集・溶離挙動を明らかにする検討を行っている。
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