Research Abstract |
金属蒸気を直接分離でき,複雑なmatrixを有する試料を精度よく,化学干渉が無く,しかも超微量元素を高感度で分析することができるSMVE分析法の開発を目的に2年間にわたり研究を行ってきた。これらの成果は9の報文にまとめ,国際雑誌に報告してきた。また学会での口頭発表も6回以上に及んだ。これらの成果を以下に概説する。 ◎SMVE分析法に関する基礎的な開発研究 これまでの研究により、モリブデン管(カラム)中における各種元素の原子化・蒸気化特性は明らかであったが、SMVE分析法のカラムとしてのタングステン管中での特性は不明であった。従って、以下の研究を行った。 ○W箔吸着-タングステン管原子吸光法によるニッケルの定量,○Mg-W Cell吸着-タングステン管原子吸光法によるロジウムの定量○Mg-W Cell吸着-タングステン管原子吸光法による金,アンチモン,テルル及びタリウムの定量,○Mg-W Cell吸着-タングステン管原子吸光法によるビスマスの定量,○タングステン管原子吸光法によるコバルトの定量,○黒鉛管原子吸光法によるオスミウムの定量・・・これらの研究によりタングステン管又は黒鉛管中でのNi,Rh,Au,Sb,Te,Co,Osなどの原子化特性を明らかにした。 ◎SMVE分析法の応用研究 ○SMVE(Sequential Metal Vapor Elution)分析法による固体試料の直接分析;キャリヤーガスとしてArl.8ml/minを流し、Moカラム(長さ250mm)温度1480℃,蒸気化温度910℃でCdとZnの金属蒸気を他の元素(Al,Ca,Cu,Fe,K,Mg,Na,Pb)と分離するのに成功した。これを生体試料中のCdとZnの定量に応用し、新しい分析法の確立に成功した。○SMVE分析法による環境試料中のCuとMnの定量;銅とモリブデンは比較的蒸気化・原子化しにくい金属であるが,アルミナ管をつけたMoカラムを開発したことによりこれらの元素も直接分離分析できるようになった。生体試料及び河川水中のCuとMnの直接定量法を創案した。○改良モルブデンカラムを用いたSMVE分析法による銅合金の分析;アルミナ管装着改良Moカラムを用いて、銅合金中のPbとZnの定量を検討した。カラム温度1260℃,蒸気化温度1470℃でPbとZnの金属蒸気が他の元素(Al,Cd,Cr,Cu,Fe,Ti,Zr)と分離することが分かった。 以上の研究から、SMVE分析法による生体試料、環境試料及び金属地金中の超微量金属元素の高精度分析法が確立できた。従来の機器分析法では不可能であった各種金属元素蒸気の直接分離を可能にした。この結果,本SMVEシステムの利点は 1)高温金属蒸気の物理的・化学的性質の解明 2)金属蒸気の直接分離分析 3)化学的前処理の不要->汚染の抑制,簡便化,低コスト 4)光学・化学干渉の低減 5)Tandem instrumentation (MS,ICP,AAS,AES)への応用の可能性、であることが分かった。
|