1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子間水素結合を介した振動増感による化学反応エネルギー共役のシミュレーション解析
Project/Area Number |
10650814
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
立花 宏 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00163478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 晴夫 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90087304)
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Keywords | 励起状態 / 水素結合 / エネルギー伝達 / 振動増感反応 / アミノアントラキノン / アミノフルオレノン / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
この研究は、「物質中に蓄積された化学エネルギーを新たに別の化学エネルギーの形で引き出す」というテーマを目的としている。発エルゴン的化学反応と、吸エルゴン的化学反応間での新たなエネルギー伝達系を構築し、エネルギー有効利用を考える。2-アミノアントラキノンと3アミノフルオレノンを可視光励起し、その励起エネルギーを熱エネルギーとしてでなく、選択的に他の分子に効率的に伝達するモデル反応を既に実験的に見つけている。エネルギー受容物質として、過酸化物のクメンヒロドロペルオキシド(CHP)を用いることによって、励起エネルギーは水素結合によって選択的にCHPに移動して酸素ー酸素結合が解離する。また、他のアルコールエネルギー受容物質に用いた場合の失活過程を詳細に検討したところ、輻射失活過程と無輻射失活過程の2つが存在することがわかっている。この2つの失活過程を検討するために分子軌道計算を行った。その結果、カルボニルのn軌道方向からの水素結合モード(in-plane mode)とπ^*軌道方向の水素結合モード(out-of-plane mode)の二つの結合モードが存在することがわかった。他のアルコールについても検討を続けており、ジオールでは同時に2つの水素結合を行うことが可能であり、モノアルコールの2倍の失活速度定数であるという実験結果とも整合した。2-アミノアントラキノンは、2つのカルボニル酸素を持つが鎖長の長いジオールでは、2つのカルボニル基に対してーつのジオール分子が水素結合可能なことがわかった。また、以上の水素結合は全てにin-plane modeとout-of-plane modeの安定構造が存在することを計算機実験にて確認した。次年度は、引き続き他のアルコール分子との水素結合体についてのシミュレーション及び、エネルギー伝達の動的過程についての検討を行う。
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[Publications] Tomoyuki Yatsuhashi,Yuka Nakajima,Tutsuya Simada,Hiroshi Tachibana,Harue Inoue: "Molecular Mechanism for the Radiationless Deactivation of the Intramolecular Charge-Transfer Excited Singlet State of Aminofluorenones through Hydrogen Bonds with Akobols" The Journal of Physical Chemistry A. 102,45. 8657-8663 (1998)