1998 Fiscal Year Annual Research Report
熱変形における低周波振動と高分子材料の動的なミクロ構造変化との相関について
Project/Area Number |
10650882
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 章泰 山梨大学, 工学部, 助教授 (70216357)
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Keywords | ポリ(エチレンテレフタレート) / 顕微FT-IR / 振動熱延伸 / 赤外吸収スペクトル / トランスコンフォメーション / ゴーシュコンフォメーション / 複屈折 / 結晶化度 |
Research Abstract |
平成10年度は、既設の顕微FT-IR装置を用いてポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムの延伸過程および振動下での延伸過程における赤外吸収スペクトルを測定した。この測定は、自作した延伸器を顕微FT-IR装置のステージに装着して行なった。用いた延伸器は、昇温過程におけるフィルムのコンフォメーション変化を測定するために、一定昇温速度で温度コントロール可能な試料室を備え、測定用の窓にはKBrの板を用いた。非晶質・無配向未延伸PETフィルムの一端を振動器に取り付けたチャックに付け、試料室を通した後、他端に荷重を印加する。まず、昇温速度3.3℃/minで室温から150℃までの温度範囲で、分解能4cm^<-1>、積算回数16回でIRスペクトルを5℃おきに測定した。試料に加える印加張力は0.7から7.3MPaまでの範囲で設定した。つぎに、振動周波数および振幅を種々かえて縦振動をフィルムに加えなからIRスペクトルを同様に測定した。ここでは、特にメチレン残基のトランスおよびゴーシュコンフォメーションに注目した。それぞれに帰属する波数は、トランスコンフォメーションが973cm^<-1>(CH_2の伸縮振動)、ゴーシュコンフォメーションが988cm^<-1>(CH_2の横揺れ振動)である。その結果、分子鎖の伸び切り構造を表すトランスコンフォメーションは2.2MPaの張力下では100℃付近まで大きな変化は見られないが、試料が伸び始める100℃付近で急激に増加し、一方、分子鎖の折畳み構造を表すゴーシュコンフォメーションは減少する。印加する張力が増加すると、より低い温度からトランス量および延伸倍率の増加がはじまる。また、延伸過程における振動の有無による相違は、複屈折、結晶化度、トランスおよびゴーシュコンフォメーションに影響を与えた。例えば、複屈折とトランス量は振動下で延伸したフィルムの値が、振動を加えないで延伸したフィルムより大きく、一方、振動下で延伸したフィルムの結晶化度は低い。以上の結果から、振動は、配向を促進させ、結晶化を阻害するものと考えられる。 今後、繊維の延伸軸方向および断面におけるスキン・コア構造を観察するために、繊維のスキンとコア部の赤外吸収スペクトルを顕微FT-IR装置を用いて測定する予定である。
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[Publications] A.SUZUKI: "Microstructure and mechanical properties of hot-air drawn poly(ethylene-2,6-naphthalate)fibers" Polymer. in press. (1999)
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[Publications] A.SUZUKI: "Application of the high-tension multiannealing to nylon 46 fibers" J.Polym.Sci, Polym.Phys.36. 2737-2743 (1998)
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[Publications] A.SUZUKI: "Application of a continuous zone-drawing/zone-annealing method to nylon 66 fibers" Polymer. 39. 5335-5341 (1998)
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[Publications] A.SUZUKI: "Application of a zone-drawing and zone-annealing method to poly(ethylene-2,6-naphthalate)fibers" Polymer. 39. 4235-4241 (1998)
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[Publications] A.SUZUKI: "Application of zone-drawing and zone-annealing method to poly(ρ-phenylene sulfide)fibers" Polymer. 36. 1731-1738 (1998)
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[Publications] A.SUZUKI: "Application of a high-tension annealing to nylon 46 fibers" Polymer J.30. 275-280 (1998)