1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10650889
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大崎 茂芳 島根大学, 教育学部, 教授 (90273911)
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Keywords | 蜘蛛の糸 / 紫外線 / 新素材 / 力学的 / 光学的 / 劣化 |
Research Abstract |
常に太陽に曝されている蜘蛛の糸が、紫外線に強い繊維素材となり得るかどうかを探索研究することは意義あるものと思われる。ここでは、蜘蛛糸に紫外線を照射した時の力学的、光学的、劣化などの物理化学的性質を調べることを目的とした。 まず、蜘蛛糸の自動糸巻器を製作するとともに、ジョロウグモの棲息場所を主として松江近郊で探索した。生息場所で多くのジョロウグモを採集した。次に、室内にてジョロウグモから慎重に採取した牽引糸を試料とした。このようにして得た牽引糸の物理化学的性質に及ぼす紫外線の影響を調べた。なお、この生息場所にて、次年度も採集する計画である。 春から夏以外の時期のジョロウグモを採集して、紫外線照射の影響のないところで、ジョロウグモから牽引糸を慎重に採取した。その際、牽引糸に蜘蛛の体重以外の余分な力が加わらないように注意した。紫外線照射実験の前に、あらかじめ室内で牽引糸を放置した時の力学強度の経時変化を調べた結果、室内では力学強度にほとんど変化しないことがわかった。 採取直後の牽引糸に紫外線を照射し、その時の牽引糸の応カ一歪曲線を測定した。その結果、紫外線照射とともに牽引糸の力学的破断強度は大幅に低下したが、弾性限界強度はほとんど変化しないことが判った。また、紫外線照射時間とともに牽引糸のラジカル強度は増加することが判った。このラジカルは、牽引糸を構成するタンパク質の分解によって生ずることが判った。ところで、秋に自動糸巻器によって多量に集めた牽引糸に紫外線を照射した結果、可視領域では吸収強度は低下するが紫外線領域の吸収は著しくなることが判った。 このように、成熟期の蜘蛛から採取した牽引糸の物理化学的性質に対して、紫外線照射による影響が著しいことが判ってきた。次年度には、誕生直後から成熟時の蜘蛛から得られるデータと比較検討する予定である。
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[Publications] 大崎茂芳: "クモの命網は力学的に安全か?" Acta Arachnologica. 47. 187-190 (1998)
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[Publications] 大崎茂芳: "Is the mechanical strength of spider's drag-lines reasonable as lifeline?" International Journal of Biological Macromalocules. (印刷中). (1999)
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[Publications] 大崎茂芳: "新繊維素材としての紫外線に強い蜘蛛糸の研究" デサントスポーツ科学. (印刷中). (1999)