1998 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子消滅法による高分子自由体積と緩和現象との相関に関する研究
Project/Area Number |
10650894
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
沖 雄一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 共通研究施設, 教授 (20004434)
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Keywords | 陽電子消滅 / 高分子 / 自由体積 / 緩和現象 / 陽電子寿翁 / ポジトロニウム / 電子の浅いトラップ / イオン化 |
Research Abstract |
陽電子はナノメータプローブと呼ばれ、陽電子消滅法(Positron Annihilation;PA)は高分子構造のナノメータの大きさの自由体積を簡単な手法で検知出来る優れた手法である。これまでの研究から、高分子構造の熱緩和現象がPAの手法によって簡単に検知できることが分かった。80Kのような低温から徐々に温度を上昇させると、メチル基やフェニル基の側鎖の回転運動が起こり、200〜250Kの温度ではセグメントの振動が起こることが知られているが、これらは自由体積の数の増減(PAの強度I3)として観測された。さらに、ガラス転移温度(Tg)以上に試料を加熱し、室温に短時間で下げた場合、Tgより低い温度に加熱したときには見られなかったI3の減少が起こり、約50時間かかり室温の安定状態に戻っている。高分子の内部構造は、温度に熱平衡状態を保つように動き、安定な状態になったとき静止する。温度による熱膨張や収縮はマクロの減少であるが、ミクロには主鎖、側鎖、置換基等の運動による内部構造の自由体積の増減と考えられる。 今年度は、低温における陽電子消滅を行い、これまで緩和現象として理解されていた陽電子消滅強度の増加は、緩和現象とは全く関係ない現象であることを実証した。これは、放射線源から放出される陽電子が高分子材料を放射化し、その際に放出された電子が非常に浅い高分子構造のポテンシャルにトラップしており、それが陽電子に捕捉されてポジトロニウムが生成している。電離した電子は放射線損傷により時間とともに増加し、これが、見かけ上陽電子消滅の長寿命成分が増加した原因となっている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 鈴木健訓: "高分子材料の自由体積と陽電子消滅" ネットワークポリマー. 19. 156-166 (1998)
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[Publications] T.Ogawa,T.Suzuki and M.Murakami: "Characterization of Poly(silylenemethylene)s by Positron Annihilation Lifetime Spectroscopy" J.Polym.Sci.Part B.Polym.Phys.36. 755-761 (1998)
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[Publications] W.Zheng.et al.: "Mobility of Positrons in γ-irradiated Polypropylene and Polyethylene" Radiation Physics and Chemistry. 55. 269-272 (1998)
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[Publications] N.Oshima,et al.: "Application of Pulsed Slow-Positron Bean to Polymer" J.Radioaralytical and Naclear Chemistuy. 239. (1999)
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[Publications] T.Hayashi,et al.: "Characterization of Curing Behavior of Cyanic Ester by a Positron-Annihilation Lifetime Technique" Polymer. 40(in Press). 1053-1056 (1999)