1999 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における流出油汚染の生態系への影響評価モデルの構築
Project/Area Number |
10650910
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
篠田 岳思 九州大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80235548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城野 清治 (株)海洋開発技術研究所, 研究室長
胡 長浜 九州大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20274532)
福地 信義 九州大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80039677)
西野 宏 三菱重工(株), 長崎研究所, 研究員
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Keywords | 流出油汚染 / システム・ダイナミクス / 生態系モデル / 影響評価モデル |
Research Abstract |
海洋汚染,特に油流出による汚染に関して,その原因のうち,船舶の運航時のバラスト水の排出に伴う流出など日常的な汚染と,衝突や座礁などの事故による流出とが,海洋への油の全流出量の46パーセントを占めている。とりわけ船舶同士の衝突事故のような突発的な油流出は,その拡散防止や防除対策が遅れたり,対策方法の選択を間違うと,大量の油が広域に渡り拡散して,その周辺地域の生態系や環境に重大な影響を与え,近郊住民にも社会的・経済的影響を与える事になる。 本研究では,従来まで行われてきた流出油事故際の回収を含めた動態シミュレーション技術を背景にして,これに加えて流出油事故に伴う汚染の生態系への影響のように,時間と共に状態が変化する多数の要因が複雑に関連する問題としてとらえて、ここでは動植物プランクトン,デトライタス,ネクトン,溶存酸素などを構成要因として,要因間の因果関係を考慮に入れたシステム・ダイナミクスに基づく生態系の動態分析のシミュレーションモデルを構築することを目的とした。 平成元年の広島県水産試験場報告の広島湾における食物連鎖図を参考にして,この海域での生態系の構成要因の経時変化についてシミュレーションを試みた。シミュレーションでは,季節変動が大きく作用し,さらに油濃度に関連する流出油量,油の性状に関連する油種,さらに事故発生の違いによっても生態系への影響は大きく異なるため,これらに関連して条件を設定した。この結果油量と同様に油種の違いが環境への影響に対して大きな要因となることが明らかとなり,油の乳化分解率や毒性などの性状は油種により様々であり,生態系への影響を考える上で重要であると考えられる。今後は流出油の移流,拡散,構成因子の流入,流出,海域の富栄養化などに関連する栄養塩濃度などをモデルに取り入れて,さらに検討を進める計画である。
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