1998 Fiscal Year Annual Research Report
大型鱗翅目昆虫の幼虫における行動に関する基礎的研究
Project/Area Number |
10660055
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
蜷木 理 東京農工大学, 農学部, 助教授 (30291347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 岳 東京農工大学, 農学部, 助手 (20210635)
黄色 俊一 東京農工大学, 農学部, 教授 (80015081)
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Keywords | カイコ / ヤママユガ / 孵化直後幼虫 / 捻転運動 / 分散性 / 遺伝 |
Research Abstract |
ヤママユガ科の天蚕や柞蚕の孵化直後幼虫は頭胸部および尾端を同時に持ち上げ、背面側に反り返るように体を回転させる捻転運動を行うことが知られている。そこで、由来の異なる8系統の天蚕において孵化直後幼虫の捻転運動を観察した結果、今回調査した項目については系統間で差は認められなかった。また、孵化直後幼虫の捻転運動の回数は11〜15回であったが、その後、脱皮直後幼虫の捻転運動の回数は齢が進むにつれて減少し、4眠脱皮直後の5齢幼虫では4回ほどであった。さらに、大型鱗翅目昆虫の柞蚕、ヒメヤママユ、クスサンおよびオオミズアオについて捻転運動を観察したところ、捻転運動に関する調査項目は種によってそれぞれ特徴を示し、本運動はヤママユガ科などの鱗翅目昆虫にとって種の特徴を示す重要な行動の一つであると考察した。 生物はその生じた場所から自然に広がってゆく性質(分散性)がある。カイコ孵化直後幼虫を用いて、暗中における分散性を調査した結果、本研究室で維持している保存系統の中に分散性のきわめて強いものおよび分散性のきわめて弱いものがあることが判明した。そこで、これら系統を交雑したF_1において分散性を測定したところ、F_1の分散性は分散性の弱かった親とほぼ同程度であった。さらに、交雑F_1雌に分散性の強い系統あるいは弱い系統を戻し交雑したBF_1において、孵化直後の幼虫の分散性を調査した結果、分散性の高い個体と低い個体が分離していると考えられたので、分散性の大きかった個体と小さかった個体とを別々に飼育した。それぞれの区ごとに次代を得て次代における分散性を調査したところ、分散性に関して選抜効果が認められ、カイコ孵化直後幼虫の分散性は遺伝的形質であり、この形質を支配する主遺伝子の存在が示唆された。平成11年度は分散性に関わる主遺伝子を明確にするとともに遺伝子座の検索を行う予定である。
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