1999 Fiscal Year Annual Research Report
植物のアルミニウム障害における脂質過酸化の関与ならびに防御機構
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10660060
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 洋子 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助教授 (50166831)
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Keywords | アルミニウム耐性 / アルミニウム毒性 / エンドウ根 / グルタチオンペルオキシダーゼ / 脂質過酸化 / タバコ培養細胞 / ヌクレオチド二リン酸キナーゼ / リンゴ酸脱水素酵素 |
Research Abstract |
I.植物根のアルミニウム(Al)障害における脂質過酸化の関わり エンドウ根を用いて、Alと鉄(Fe)イオンの相互作用による,脂質過酸化促進について検討した。Alによる脂質過酸化は、Feを同時添加しても僅かに促進されるにすぎず、従って、Alによる脂質過酸化は、主としてFe-非依存的であることが分かった。次に、根における脂質過酸化の生成部位を見るために、シッフ試薬を用いたところ、極めて感度よく特異的な染色がみられ、この方法により、Alによる脂質過酸化とAl集積は同じ部位であることが分かった。最後に、Alによる脂質過酸化が根の増殖に及ぼす影響を解析した結果、Al処理直後に見られる根伸長阻害の原因では無いが、Alを集積した根がAlの非存在下で再び増殖を開始するのを妨げる障害の一つであることを明らかにした。 II.Al耐性タバコ培養細胞株107と213の抗酸化酵素の解析 タバコ培養細胞では、AlはFe-依存性脂質過酸化を促進し、アポトーシス様細胞死を引き起こすことを明らかにした。このような細胞死に耐性を示す107株の粗酵素液には、動物のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)と同じ基質特異性を示す活性が見られ、陰イオン交換クロマトグラフィーによりグルタチオンS-トランスフェラーゼとは異なること、107株のアスコルビン酸ペルオキシダーゼやグアイアコールペルオキシダーゼ活性は親株と変わらないことから、植物では新規の抗酸化酵素である可能性が高い。GPX様活性は非常に不安定で、精製が難航している。213株では、親株に比較して発現量の多い蛋白質を2次元電気泳動法で検索し、2個の蛋白質についてアミノ酸の部分配列を決定したところ、リンゴ酸脱水素酵素およびヌクレオシド二リン酸キナーゼと相同性が高いことが分かった。これらの酵素と脂質過酸化耐性との関わりを解明することが今後の課題である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Ikegawa, H.: "Responses to aluminium of suspension-cultured tobacco cells in a simple calcium solution"Soil Sci. Plant Nutr.. (in press).
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[Publications] Chang, Y-C.: "Enhancement of callose production by a combination of aluminum and iron in suspension-cultured tobacco (Nicotiana tabacum) cells"Soil Sci. Plant Nutr.. 45. 337-347 (1999)
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[Publications] Yamaguchi, Y.: "Cell death process initiated by a combination of aluminum and iron in suspension-cultured tobacco cells(Nicotiana tabacum) : Apotosis-like cell death mediated by calcium and proteinase"Soil Sci. Plant Nutr.. 45. 647-657 (1999)
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[Publications] Yamaguchi, Y.: "Protective effect of glutathione on the cytotoxicity caused by a combination of aluminum and iron in suspension-cultured tobacco cells"Physiol. Plant.. 105. 417-422 (1999)
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[Publications] Sivaguru, M.: "Differential impacts of aluminium on microtuble organization depends on growth phase in suspension-cultured tobacco cells"Physiol. Plant.. 107. 110-119 (1999)
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[Publications] Chang, Y-C.: "Accumulation of aluminium in the cell wall pectin in cultured tobacco (Nicotiana tabacum) cells treated with a combination of aluminium and iron"Plant Cell Environ.. 22. 1009-1017 (1999)
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[Publications] 山本洋子: "植物栄養・肥料の事典(第7章:活性酸素ストレス、酸ストレス.分担執筆)"朝倉出版 (印刷中).
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[Publications] 山本洋子: "新農学大事典(第23章:酸性土壌(アルミニウム).分担執筆)"養賢堂 (印刷中).