1998 Fiscal Year Annual Research Report
生物発光の構造基盤-ゲンジボタル・ルシフェラーゼのX線結晶構造解析
Project/Area Number |
10660082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 化学研究所, 助手 (90204487)
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Keywords | ルシフェラーゼ / X線結晶構造解析 / 生物発光 / 酵素反応機構 / 酵素反応中間体 / ATP / デヒドロルシフェリン |
Research Abstract |
ホタルの発生現象は、その仕組みに科学的な興味が持たれているだけでなく、細胞生物学、分子生物学の研究や、臨床検査での利用研究が進んでいるなど、実用的な価値も認められている。その発光は、ルシフェラーゼによる酵素反応によって引き起こされている。そこで、本研究課題では、ゲンジボタルの遺伝子から調整したルシフェラーゼのX線結晶構造解析を行うことにより、同酵素の反応機構の構造的な基盤を明らかにし、発光の仕組みを解明することを目的とした。今年度は、以下の結果が得られた。 (1)ゲンジボタルルシフェラーゼの結晶を塩化リチウムとポリエチレングリコールを沈殿剤として調整した。そのX線回折強度を測定し、すでに解析されている別種昆虫由来の同酵素の結晶構造モデルを用いてプログラムAMOREを用いて分子置換法による解析を試みたところ、相関係数50%、R値45%の解を求めることをに成功した。そこで、コンピューターグラフィクスを用いてアミノ酸残基をゲンジボタルのアミノ酸配列へと変更しながらXPLORを用いて構造の精密化を行い、R値20%の分子モデルを構築することができた。また、今回の結晶化条件では、基質ATPを添加しているが、その構造のうちAMPの部分構造を電子密度図上で確認することができた。すでに報告されている昆虫のルシフェラーゼとの構造を比較したところ、分子を構成する2つのドメインの相対的な配置が90度知覚も回転していることが判明した。 (2)基質ルシフェリンのアナログであるデヒドロルリフェリンの合成を行い、十分量の試料を得ることができた。そのデヒドロルシフェリンを用いてルシフェラーゼに対する阻害活性を調べたところ、拮抗阻害を示すこと、κは、0.1μMと、基質Kmと比較して約200倍強力であることが判明した。現在、ルシフェラーゼとATPとデヒドロルシフェリンを用いて反応中間体類似の立体構造を解析するための結晶化を行っている。
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[Publications] 加藤博章: "酵素の四次元構造解析" ファルマシア. 35(1). 29-32 (1998)
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[Publications] Yamashita,Aatsuko: "Crystallization and preliminary X-ray study of tropinone reductase II." Acta Crystallogr.D54. 1405-1407 (1998)