1999 Fiscal Year Annual Research Report
プルラン分解性α-アミラーゼの機能構造解析と基質特異性の変換
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10660096
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
酒井 坦 静岡県立大学, 大学院・生活健康科学研究科, 教授 (10092214)
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Keywords | 酵素の機能構造 / タンパク質工学 / 部位指定変異 / サブサイト / 基質特異性 / 結晶化 / 基質結合部位 / 速度論的解析 |
Research Abstract |
Thermoactinomyces vulgaris R-47のアミラーゼII(TVAII)はプルランも分解できる特異なアミラーゼである。種々のオリゴ糖などに対する作用から、この酵素はマルトース単位の還元末端側をα-1,4結合、α-1,6結合にかかわらず分解すると考えられる。従来の研究より202番目以降のHKYDTというアミノ酸配列が基質認識に重要であると推察され、昨年度はこの配列をTrpに変異させた酵素の解析を行い、この領域が基質との結合に重要であることが分かった。そこで昨年度に引き続きTVAIIの201番目から206番目までのアミノ酸残基をAlaに変異させた変異酵素を調製し、種々の基質に対する速度論的性質を調べた。その結果を要約すると(1)H201A,D205A,T206Aの変異酵素は野生型酵素とあまり大きな変化は無かった。(2)H202A変異酵素では測定した全ての基質に対してKm値の増加、kcat値の減少が見られたが、低分子基質に対するKm値の増加がより顕著であった。(3)K203A変異酵素では全ての基質に対して大幅なKm値の増大が見られた。(4)Y204A変異酵素では全ての基質に対してkcat値が顕著に減少した。これらの速度論的解析結果は、最近明らかになったTVAllの結晶構造を考慮すると、以下のように考察できる。H202のimidazole環とY204のphenol環はそれぞれサブサイト-2、-1に入る糖と相互作用し、マルトース単位の結合部位を形成している。K203の側鎖は基質結合部位周辺の主鎖と水素結合のネットワークを形成し、基質結合部位全体の安定化に役立っている。Y204Aで大幅なkcat値の減少が見られたのは、この残基が酵素のinduced fitに重要な役割を果たしているためと推察される。今後は以上のことを検証するために、変異酵素の結晶化を試み、構造決定を図る予定である。
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