1998 Fiscal Year Annual Research Report
アンジオテンシン代謝分解物の血圧調節関与と機能性食品素材への展開
Project/Area Number |
10660128
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 利郎 九州大学, 農学部, 助手 (20238942)
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Keywords | 高血圧 / レニン-アンジオテンシン系 / アンジオテンシン代謝物 |
Research Abstract |
不活性代謝物とされる低分子アンジオテンシン(ANG)代謝物の生理作用を明らかとするため、ANG類を除去したヒト血漿を新たに調製し、さらにつくば高血圧マウス(THM)を用いてその降圧効果を詳細に検討した。まず、ヘパリン採血したヒト血漿からANGI、II抗体を用いて該当物質を除去後、さらにODS処理することにより低分子ANG類を完全に除去した。なお、本処理によって血漿ACE活性に有意差は認められなかった(処理前;0.42±0.03,処理後;0.38±0.02nmo1/m1/min)。本血漿に対してin vitro ACE阻害作用を有する低分子,ANG類、すなわち、ANG(3-8),ANG(5-8),ANG(3-4)をヒト正常レベル濃度(各50,100,400fmol/ml-plasma)再度添加し、ANGIを基質として代謝物量をナフタレン2,3ジアルデヒドを用いた蛍光HPLC力ラムスイッチング法により定量した。その結果、血漿からANG(3-4)を除去することによってANGIIの生成が約2倍促進されることが判明した。さらに、その生成はANG(3-4)濃度依存的に抑制された。また、ヒトレニン-アンジオテンシン(RA)系を保有するTHM(11週齢、雄)に対してANG(3-4)(0.1mg/gofbody weight)を単回経口投与した結果、12時間後まで顕著な(n=7;p<0.001)血圧降下(DSBP:-22.6mmHg)が認められた。なお、この効果は投与量依存的には推移しなかったことから、ANG(3-4)の腸管吸収量にはある程度の制限があるものと推察された。また、このTHMにおける血圧降下作用は加齢とともに低下することが判明した。以上の結果、ANG(3-4)をはじめとする特定の低分子ANG類は通常の代謝レベルでANGIIの生成に対して抑制的に働くこと、またその作用機作は循環RA系を中心とするものであることが初めて明らかとなった。
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