1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660140
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
箕口 秀夫 新潟大学, 農学部, 助手 (30291355)
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Keywords | 佐渡島 / コナラ属 / 更新 / 制限要因 / 花粉制限 / 種子捕食 / 野ネズミ / 堅果 |
Research Abstract |
カシワ(コナラ属)は、佐渡において風の影響を強く受ける海岸を中心に分布している。この様な劣悪な環境下のコナラ属群落には実生起源の稚樹がほとんど存在しない事が知られている。そこで、佐渡島海岸カシワ林において開花、結実、種子散布、発芽、そして定着までの更新初期において更新を制限している要因を検証した。 海岸カシワ林に林分構造の異なる6プロットを設置した。雌・雄花生産量、開花から結実までの雌花の生残、及び堅果落下量を明らかにするためシードトラップを用いて調査を行った。マグネットを埋め込んだ堅果を金属探知器により追跡する方法で落下堅果の動態を調査した。ケージを用いた野外実験と生け捕りワナにより堅果の動態に影響を及ぼしている動物を明らかにした。また、当年生実生の生残について調査を行った。 各プロットとも十分な雌花・雄花が生産され、24.1〜55.9個/m^2成熟堅果が生産された。虫害等により健全堅果生産数は3.5〜11.0個/m^2に減少した。マグネットを埋め込んだ堅果はすべて消失した。消失は野ネズミによる持ち去りで、金属探知器を用いて発見した堅果はすべてが捕食されていた。野ネズミが捕食できない金網に入れてリターで覆った堅果の9割以上が発芽した。しかし、当年生実生発生数は0.0〜3.81本/m^2で落下した健全堅果よりも著しく少なかった。当年生実生の秋までの生残率は32.9〜83.3%でプロットにより大きく異なっていた。 以上のことから、佐渡島海岸カシワ林の実生更新において、開花、結実から種子散布までの過程での雌花数、花粉量、及び虫害は制限要因ではなく、種子散布から当年生実生の発生までの過程での野ネズミによる堅果の捕食が主要な制限要因であることが明らかになった。また、当年生実生の生残率は林分により大きく異なっており、林分構造により種子捕食以外の制限要因が働いていると考えられた。
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