1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660140
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
箕口 秀夫 新潟大学, 農学部, 助教授 (30291355)
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Keywords | 佐渡島 / コナラ属 / 更 新 / 制限要因 / 光環境 / 堅 果 / 種子捕食 / 野ネズミ |
Research Abstract |
佐渡島において島状に孤立分布するコナラ属群落(カシワ,ウラジロガシ)が実生更新で維持されていくかどうかを検証した。今年度は,後継樹の多寡、分布を含む林分構造からウラジロガシ林の更新過程を推定した。同時に、カシワ林も含め,開花結実から堅果の散布、実生の発生・生残の実生更新初期過程における更新制限要因、及びその強度を明らかにした。落下堅果の動態では、堅果の散布/捕食者である野ネズミの機能を明らかにした。 1.ウラジロガシ林の更新過程:ウラジロガシの胸高直径分布はベル型を示し,一斉に更新した後,連続的な更新が行われていないことが明らかになった。この結果は林内幼樹をもつ同じブナ科のスダジイと対照的であった。 2.カシワの実生更新制限要因:開花結実から実生までのデモグラフィーの解析から,高い虫害率が実生更新制限要因であり,その原因として雌花生産量の年変動が小さいため虫害をエスケープできていないことが考えられた。 3.落下堅果の消失に関与する野ネズミの同定と消失堅果の追跡:佐渡島ではアカネズミがカシワ,ウラジロガシ,及びスダジイ堅果の消失に関与していることが明らかになった。消失した堅果はいったん林分の広い範囲に分散貯蔵された。しかし,時間の経過とともにすべての堅果が再発見され,翌春まで捕食されていた。 4.ウラジロガシ林の林床における光環境と実生の生残:5年生以上のウラジロガシ実生の本数と11月から4月までの冬季の相対PPFD値の間に有意な相関が認められ,一部に混交している落葉広葉樹の樹冠の下や林縁など,冬季に光環境が好転する場所で実生が生残,成長していることが明らかになった。これはウラジロガシが常緑で冬季低温下でも光合成を行うことができる生理的特性を反映した結果と考えられた。 以上より孤立したコナラ属群落の適正な維持管理技術について検討した。
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