1999 Fiscal Year Annual Research Report
森林における樹上分解者の群集構造と腐食連鎖系における位置
Project/Area Number |
10660142
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
肘井 直樹 名古屋大学, 農学部, 助教授 (80202274)
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Keywords | ササラダニ / トビムシ / スギ / 分解者 / 樹冠層 / 枯枝葉 / 洗浄法 / 小型節足動物群集 |
Research Abstract |
1.調査は名古屋大学農学部附属稲武演習林において、1999年5月21日から9月27日まで各月1回ずつ、計5回おこなった。演習林のスギ人工林内に調査プロットを設定し、スギ樹冠層から枯枝葉を採取した。その後枯枝葉を実験室に持ち帰り、枯葉と枯枝を別々にして、洗浄法により小型節足動物を抽出した。それらは実体顕微鏡下で目別に分類をおこなった。5月分のみは光学顕微鏡下で科までの同定を試みた。また、枯葉と枯枝の湿重、乾重も測定した。 2.スギ樹冠内の枯枝葉からはダニ目、トブムシ目、ハエ目幼虫が採集された。そのうちダニ目が個体数のうえで半数を占め、トビムシ目、ハエ目幼虫が残りを占めた。ダニ目は9科、トビムシ目は5科確認され、とくにダニ目はすべてが腐食性・菌食性のササラダニ亜目であり、樹冠層全体を対象した調査によって示された種構成とは異なっていた。スギ枯枝葉内でも、枯葉と枯枝では種構成に違いがあった。これは枯葉と枯枝で存在する資源が異なり、小型節足動物にとってハビタットとして異質性があるためと考えられる。 3.スギ枯枝葉内の小型節足動物群集の個体数密度は、ダニ目の個体数密度の増加が全小型節足動物の個体数密度の増加に大きな影響をおよぼしていた。ダニ目は5月から9月にかけて増加傾向を示したが、これは樹冠層全体を対象とした調査結果とは異なっていた。このことから樹冠内の枯死部は、樹冠層全体の中でも特異な環境であると考えられる。スギ枯枝葉内の小型節足動物群集の個体数占有率では、いずれの月においてもダニ目が最も高い占有率を示していた。トビムシ目、ハエ目幼虫の個体数占有率は、高温により乾燥すると考えられる7月、8月に高くなる傾向が認められたが、これらの個体数密度は月によらずほぼ一定したいた。
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