2000 Fiscal Year Annual Research Report
DNA多型分析を応用した沿岸資源生物の繁殖生態の解明
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10660169
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宗原 弘幸 北海道大学, 水産学部, 助手 (80212249)
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Keywords | DNA多型 / マイクロサテライト / mtDNA / 繁殖行動 / 水中ビデオカメラ / 卵食 / 血縁判定 / アイナメ類 |
Research Abstract |
雌雄や近縁種間で経済価値に著しい差がある種などでは、資源保護、資源管理に、配偶システムの解明が不可欠である。本研究では、系群解析、系統解析に有効とされてきたDNA多型を応用し、野外調査、行動観察及び室内実験と併用し資源管理モデルの構築を試みた。 ・前年度までの水中ビデオカメラによるアイナメ類の繁殖行動の分析と、胃内容卵と保護雄との血縁判定をマイクロサテライトDNA多型を用いて行った。さらに、ビデオ解析から、アイナメ雄とスジアイナメ雌またはクジメ雌との交雑が高頻度で起こっていたので、標本採集を行い、mtDNA多型とゲノムDNAによる雑種個体の父系、母系分析を行った。その結果、なわばり雄と胃内容物中の大きな卵塊とは血縁がなかったが、バラの卵には血縁のあるケースが多く、選択的な摂食の可能性が示唆された。雑種個体には、アイナメ雄とスジアイナメ雌からの組み合わせが多く、ビデオ観察と一致した。また、雑種には念性を持つ雌個体がいて、事実、F2世代の雑種個体もみられた。 ・シワイカナゴのDNA多型増幅用プライマーを設計し、これらの有用性を調査した。その結果、3組のプライマーでヘテロ出現率が90%近い値を示した。現在、なわばり雄と保護卵塊との血縁を調査中で、親個体数密度、海藻密度、および繁殖成功度との関係を明らかにする。 ・前年度までにin vitroで父性の観察法として、Hoecst dyeによる蛍光染色法を確立した。これを使い、多核化し授精機能を持たないヨコスジカジカの異型精子は、多雄由来の精子の卵への接近をブロックすることを明らかにした。 ・以上の結果から、個体群密度などが卵の受精や父性に関与し、卵保護する魚種では、こうした産卵時の状況が保護や卵食を通じ、資源量に影響を与えることが示唆された。沿岸魚には、海底地形に依存して繁殖する種が多いことから、産卵場の環境保全が資源管理に重要であろう。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Narimatsu: "Territoriality, egg desertion and mating success of a paternal care fish, Hypoptychus dybowskii (Gasterosteiformes) "Behaviour. (in press). (2001)
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[Publications] Hayakawa: "Facultatively internal fertilization and anomalous embryonic development of a non-copulatory sculpin Hemilepidotus gilberti."Journal of Experimental Marine Biology and Ecology. 256・1. 51-58 (2001)
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[Publications] Munehara: "Microsatellite markers and multiple paternity in a paternal care fish, Hexagrammos otakii"Journal of Ethology. 18・2. 101-104 (2000)
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[Publications] Munehara: "Spawning behavior and interspecific breeding in three Japanese greenlings (Hexagrammidae) "Ichthyological Research. 47・3. 287-292 (2000)
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[Publications] 宗原弘幸: "魚のエピソード.アイナメの嫁取りと子育て"東海大学出版会(印刷中). (2001)