Research Abstract |
研究遂行上必要な基礎的知見である付着生物種の選定,幼生の飼育技術と着底・変態誘起活性のアッセイ法の確率を行うとともに,幼生の着底,変態誘起因子の探索を行った。 付着生物種としては,目的にあう種類として,ムラサキイガイ,コウロエンカワヒバリガイ,ホトトギス,タテジマフジツボ,エゾカサネカンザシなどが適当であることが明らかになった。このうちエゾカサネカンザシは6月から11月にかけて成熟卵が入手でき,飼育時間も10日程度と短いことから,集中的な実験が可能である。タテジマフジツボについては,親個体にアルテミア・ノープリウス幼生を与えることで容易に幼生が得られるため,ほぼ周年にわたり実験が可能である。他の種類については成熟期に集中的に実験を行うこととした。 飼育条件の内飼育水温については,ムラサキイガイ以外の種類については温度25゚Cで,幼生が良好に発育した。飼育塩分については,コウロエンカワヒバリガイ,ホトトギス,タテジマフジツボが20〜25psuの比較的低塩分で幼生の成長が良好であったが,他の種類では30psu程度で良好な結果が得られた。幼生に与える餌としては,珪藻のChaetoceros calcitransが全ての種類で使用できた。 幼生の着底,変態を誘起する因子として,エゾカサネカンザシでは,新しく形成された同種の棲管が高い活性を示した。新棲管に対する幼生の反応は極めて速く,導入後数時間以内に棲管土で着底,変態した。新棲管の水抽出物には活性がなかったが,有効な抽出方法については,来年度に材料を十分量そろえた上で検討する予定である。この他,幼生自体のメタノール抽出物,天然の海中で形成された微生物フィルムが,活性を示した。人為的な変態誘起因子として,神経伝達物質のアドレナリンとその前駆体であるL-3,4-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)が活性を示した。これらの物質のアゴニスト,アンタゴニストの作用については来年度検討する予定である。
|