1999 Fiscal Year Annual Research Report
付着生物幼生の着底、変態を誘起する化学因子に関する研究
Project/Area Number |
10660172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 研 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (20160715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 修治 静岡大学, 農学部, 教授 (90230979)
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Keywords | 付着生物 / 幼生 / 変態 / 着底 / アドレナリン / L-DOPA |
Research Abstract |
昨年度の結果から、エゾカサネカンザシは成熟期が6月から11月にかけてと長く、飼育時間も10日程度と比較的短いことから、集中的な実験が可能であることが明らかになったため、主にこの種を用いて幼生の着底、変態現象の発現過程の解明にあたった。 昨年度の結果から、幼生の着底、変態を誘起する人為的な変態誘起因子として、神経伝達物質のアドレナリンとその前駆体であるL-3,4-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)が活性を示すことが明らかになったが、今年度はこのうちアドレナリンのアゴニストについて検討した。検討したepinephrine(α,β)、norepinephrine(α,β)、L-phenylephrine(α_1)、clonidine(α_2)、isoproterenol(β)の活性は、epinephrine>norepinephrine【greater than or equal】isoproterenol>phenylephrine>clonidineであった。このことからエゾカサネカンザシ幼生の着底、変態現象には、アドレナリンβ受容体が関与していることがうかがわれたが、その濃度と現象の発現の関係はマガキなどで知られているものとは大きく異なっており、脊椎動物の受容体とは異なる可能性もある。したがって来年度は更に多くのアゴニスト、アンタゴニストについて検討する必要性がある。 幼生の着底、変態を誘起する別の人為的な変態誘起因子として、海水中のイオン濃度についても検討した。その結果、海水中のK^+とCa^<2+>について、その濃度を上昇させることで、活性が認められた。すなわち、K^+では50mMを中心に20mM〜70mMで、Ca^<2+>では20mM〜30mMを中心に10mMから40mMの間で、濃度依存的に変態を誘起する活性があった。またCa^<2+>については、その濃度を通常の海水の1/2にすることで、L-DOPAによる変態の誘起が阻害された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Khin-Maung-Oo, H. Kurokura, T. Iwano, K. Okamoto, R. Kado, A. Hino: "Cryopreservation of nauplius larvae of barnacle, Balanus amphitrite Darwin"Fisheries Science. 64(6). 857-860 (1998)
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[Publications] K. Okamoto, A. Watanabe, K. Sakata, and N. Watanabe: "Chemical signals involved in larval metamorphosis in Hydroides ezoensis(Serpulidae ; Polychaeta). Part I. Induction of larval metamorphosis by extracts of the adult tube clumps"J. Marine Biotechnology. 6(1). 7-10 (1998)
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[Publications] N. Watanabe, S. Watanabe, J. Ide, Y. Watanabe, K. Sakata,and K.Okamoto: "Chemical signals involved in larval metamorphosis in Hydroides ezoensis (Serpulidae ; Polychaeta). Part II. Isolation and identification of a new monoacyl glycerol from the adult tube clumps as a metamorphosis-inducing substance"J. Marine Biotechnology. 6(1). 11-15 (1998)
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[Publications] 岡本 研、渡辺 修治: "カサネカンザシ幼生の変態,着底"月刊 海洋. 29(4). 257-264 (1997)
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[Publications] K. Okamoto, A. Watanabe, N. Watanabe, and K. Sakata: "Induction of larval metamorphosis in serpulid polychaetes by L-DOPA and catecholamines"Fisheries Science. 61(1). 69-74 (1995)