1998 Fiscal Year Annual Research Report
魚類のイオン・浸透圧調節における塩類細胞の機能の多様性
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10660173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 豊二 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70221190)
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Keywords | 浸透圧調節 / 塩類細胞 / ティラピア / 広塩性 |
Research Abstract |
本年度は、広塩性魚ティラピアの胚・仔魚を材料に用いて、卵黄嚢上皮に見られる塩類細胞の分化・発達様式を明らかにした。ティラピアは発生の初期段階から優れた広塩性魚を示し、淡水から海水に直接移行しても十分に適応できる。このように優れた広塩性は卵黄嚢上皮に分布する塩類細胞のイオン輸送能によるところが多い。淡水から海水に移すと卵黄嚢上皮塩類細胞は小型の淡水型から大型で複合体を形成する海水型に変化することが、我々のこれまでの研究で明らかにされている。ところが、海水移行に伴い淡水型が消失し新たに海水型が出現するのか、あるいは淡水型が海水型へと機能を変化させるのかは不明である。そこで、ティラピアの卵黄嚢上皮塩類細胞を蛍光色素で生体染色し、海水移行後の個々の塩類細胞の変化を連続的に観察した。本研究では単純な平面構造を呈す卵黄嚢上皮を材料に用い、生体染色とレーザースキャン顕微鏡を組み合わせることによって、世界で初めて塩類細胞の連続観察に成功した。その結果、海水移行4日目の時点で観察開始時の約80%に相当する細胞が残っていた。個々の細胞は約2倍の大きさになり、しかも淡水中では単独に存在していた細胞が側面にアクセサリー細胞を発達させることで海水型の細胞複合体を形成した。一方、対照群として淡水に4日間保持した個体では、塩類細胞の大きさに変化は見られなかった。以上の結果より、単独に存在する小型の淡水型塩類細胞は海水移行に伴い、その形態・機能を変化させて海水型の細胞複合体になることが証明された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Sasai 他: "Extrabranchial chloride cells in early life stages of the Japanese eel,Anguilla japonica" Ichthyol.Res.45. 95-98 (1998)
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[Publications] S.Sasai 他: "Morphological alteration of two types of gill chloride cells in Japanese eel during cotadromous migration" Can.J.Zool. (印刷中). (1999)
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[Publications] J.Hiroi 他: "Immunolocolization of vacuolar type H^+-ATPase in the yolk-sac membrane of tilapia larvae" Zool.Sci.15. 447-453 (1998)
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[Publications] J.Hiroi: "Developmental Sequence of chloride cells in the body skin and gills of Japanese flounder" Zool.Sci.15. 455-460 (1998)
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[Publications] N.Hirai: "Distributional changes in branchial chloride cells during fresh-water adaptation in Japanese sea bass." Zool.Sci.(印刷中). (1999)
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[Publications] T.Kaneko,S.Hasegawa: "Application of laser scanning Microscopy to morphological observations on drinking in freshwater medaka larvae and those transferred to 80% SW" Fish.Sci.(印刷中). (1999)