1999 Fiscal Year Annual Research Report
内湾環境の物質循環と種の多様性からみた自然プランクトン群集と養殖生物の相互作用
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10660177
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
谷村 篤 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (10125213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 章人 三重大学, 生物資源学部, 教授 (10111163)
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Keywords | 内湾環境 / 物質循環 / 種の多様性 / プランクトン群集 / 養殖生物 / ピコプランクトン / ナノプランクトン / 微生物食物連鎖 |
Research Abstract |
本研究は、養殖場として高度に利用された典型的内湾水域である英虞湾と的矢湾を中心に、浮遊生物群集の種組成及び生物量の季節変化を海洋環境との関連において明かにし、加えて養殖生物による影響を検討することを目的としたものである。 前年度の調査から、英虞湾の植物プランクトンの周年変化は、1年の大半においてピコ・ナノサイズの植物プランクトンが卓越することを明らかにした。今年度は、前年度の結果をふまえ、英虞湾内の三重大学生物資源学部付属水産実験所前に設けた定点での定期調査を実施し、周年にわたるピコおよびナノプランクトン群集の現存量および生産量を見積もり、当該水域におけるこれら微細な生物群集の栄養動態の季節変化を調査した。ピコプランクトンの現存量は、4月から10月中旬までの成層期(夏期間)および、10月下旬から3月の混合期(冬期間)でそれぞれ、52.8mgC/m^3、33.5mgC/m^3の値を得た。このうち細菌の現存量は、周年ピコプランクトン現存量の80%を占めることが明らかとなった。ピコプランクトンおよびナノプランクトンの生産量は、それぞれ夏期間で20.3mgC/m^3/day、29.7mgC/m^3/day、冬期間で10.0mgC/m^3/day、12.3mgC/m^3/dayの値を得た。また、細菌の生産量はピコプランクトン生産量の50〜70%と高い割合を占めることも明らかとなった。このように、英虞湾の微生物食物連鎖は周年活発に駆動していることを明らかにすることができ、その強さは季節によって菜食食物連鎖に大きな影響を与えている可能性を示唆することができた。 本年度は、英虞湾のみならず的矢湾においても低次生産環境の調査を実施した。その結果、的矢湾表層における植物プランクトンは河川増水時には河川によるNとPの供給によって増殖するが,河川平水時には増水時に利用されなかったNと河川から負荷されたN,および湾底土からのPの供給によって植物プランクトンが増殖することが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 今井 直: "養殖漁場としての的矢湾の低次生産環境特性"三重大学生物資源学部 紀要. 23. 1-12 (1999)
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[Publications] Ishikawa,A.: "Vegitative cell and cyst assamblages of armo red dinoflagellates in Onagawa Bay, northeast Japan"Plankton Biology and Ecology. 47. 12-22 (2000)