| Research Abstract |
渦鞭毛藻の一種Heterocapsa circularisqusmaは西日本の内湾で赤潮を形成し,大量の真珠貝,カキ,アサリ等を斃死させることから近年注目を集めている。そして本藻の細胞内に細菌が存在している事が判明した。しかしながら,この細胞内細菌とH.circularisquamaの関係は現在不明であり,特に本種の赤潮発生機構ににおける細胞内細菌の役割を解明する事は重要な課題であると考えられる。
本研究に用いたH.circularisquamaの培養株は,英虞湾(A株),伊万里湾(I株),浦ノ内湾(UA,UB株),八代海(Y株)から分離された5クローン株である。各クローン培養株に由来する細胞内細菌を,AB,IB,UAB,UBB,YBとした。これらをSWM-3培養液中で増殖させ,後期定常期〜死滅期に至るまで培養し,藻類細胞数,細胞内細菌数,ならびに浮遊細菌数を計数した。細菌数(浮遊,細胞内)はDAPI染色と落射蛍光顕微鏡による直接計数法で求めた。また定常期初期に光を遮断する実験を行い,細菌と藻類の挙動を追った。さらに,種々の培養液中で細菌のみの培養を試み,細菌数の増減を調べた。
培養全体の細菌数,及び本藻一細胞当たりの細胞内細菌数の変動パターンから,細菌株を3つにグループ分け出来た。すなわち,YBとUAB(培養液中に10@@S16@@E1Cells/mlのオーダー,本藻一細胞当たり10細胞以下),ABとIB
(培養液中に10@@S17@@E1Cells/mlのオーダー,10〜100細菌/藻細胞),ならびにUBB(培養液中に10@@S18@@E1Cells/mlのオーダー,10細菌以下/藻細胞)である。また,YBとUAB,ABとIB,UBBの順で,細菌の増殖は生きた藻類細胞に依存した。さらに,種々の培地を用いて細胞内細菌の分離培養を試みたが,UBBが微小なコロニーを形成したのみで,他の細菌は分離不能であった。以上からH.circularisquama細胞内細菌は多様であり,しかも両者の相互関係も多様である事が示唆された。
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