Research Abstract |
渦鞭毛藻の一種Heterocapsa circularisquamaは西日本の内湾で赤潮を形成し,大量の真珠貝,カキ,アサリ等を斃死させることから近年注目を集めている。そして本藻の細胞内に細菌が存在している事が判明した。しかしながら,この細胞内細菌とH.circularisquamaの関係は現在不明であり,特に本種の赤潮発生機構における細胞内細菌の役割を解明する事は重要な課題であると考えられる。 本研究に用いたH.circularisquamaの培養株は,英虞湾(A株),伊万里湾(I株),浦ノ内湾(UA,UB株),八代海(Y株)から分離された5クローン株である。各クローン培養株に由来する細胞内細菌を,AB,IB,UAB,UBB,YBとした。本年度は,各クローン株および無菌株を用いて,光条件と栄養塩濃度を変化させた培養実験を実施することにより,細胞内細菌が本藻の増殖に及ぼす影響を検討した。設定した光強度は,150,30,10,5,および0μmol/m^2/secである。栄養塩はもとのSWM-3培養液の濃度100,10,5,1,0.02,0.01%に減菌海水で調製した。光と栄養の各組み合わせで培養を意行い,本藻の増殖を調べた。温度25℃,明暗周期は14時間明-10時間暗である。 150および30μmol/m^2/secの条件下,いずれの濃度のSWM-3培地で本藻を培養しても,各クローン株の増殖速度はほぼ同じであった。今年度の実験では,本藻のクローン株間で細胞菌が増殖に与える影響に関して顕著な差を見出すことは出来なかった。培地に用いた海水中に含まれる物質等が,藻類に及ぼす細胞内細菌の影響を不明瞭にしている可能性も考えられる。今後の問題点はしては,人工海水ベースの培地を用いて増殖実験を実施して,よりクリアに影響を評価する事が挙げられる。
|