1998 Fiscal Year Annual Research Report
有明海産ムツゴロウの生産に関わる餌料環境と摂餌行動との関係の研究
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10660188
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田北 徹 長崎大学, 水産学部, 教授 (30039721)
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Keywords | ムツゴロウ / 餌料藻類 / 行動 |
Research Abstract |
第一年目として、ムツゴロウの行動解析手法の検討、行動と潮汐との関係および餌料珪藻の現存量測定方法について検討を行った。ムツゴロウの行動はビデオ画像に記録し、その解析は、長崎大学工学部機会制御研究室による行動解析プログラムで行った。 珪藻については、そのほとんどが2mm厚の干潟表層に分布することを確認した上で、5mm厚の泥を採取し、アセトンで抽出した泥中のクロロフィル-a量を測定した。泥表層の珪藻は、張潮により巻き上げられ、水中に高濃度に懸濁して運ばれるので、水中のクロロフィル-a量は経時的に大きく変化し、干潟上の餌料環境は潮汐ごとに変動することが判明した。 ムツゴロウは、小潮の低潮ラインより高い位置に生息孔を造り、大潮を中心として高潮時に生息域が水没する期間に活動する。小潮前後の生息孔が水没しない期間は、個体の行動圏は次第に縮小するが、高潮時の水位が比較的高い間は魚自身が水を運んで干潟を濡らすため、活動を行う。干潟表層の泥の含水率が67%以下になる小潮の数日間は巣孔内で絶食することが判明した。 各個体は、平均0.62m^2の行動圏を有し、その中で平均0.41m^2を占有的に使用した。行動圏の周辺部は、隣接個体が入り会う場所で、そこで隣接個体との攻撃・防御行動が生じた。拮抗関係に隣接個体間の優劣は明確でなく、一方的な攻撃も防御も見られなかった。 第二年目は、上記の検討結果をもとに、餌料珪藻量の増減機構、餌料量と行動圏との関係など、ムツゴロウ生産量と基礎生産機構の関係に検討項目を拡大する予定である。
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