1999 Fiscal Year Annual Research Report
日周鉛直移動するヨコエビと琵琶湖産アユのビブリオ病発症との関連性
Project/Area Number |
10660191
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
江口 充 近畿大学, 農学部, 助教授 (40176764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 祐志 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (90207150)
|
Keywords | 湖産アユ / ビブリオ病 / Vibro anguillarum / ヨコエビ / Jesogammarus annandalei / コロニー形成能 / 蛍光抗体法 / VBNC |
Research Abstract |
琵琶湖産アユにビブリオ病を引き起こす原因菌のVibrio anguillarum血清型J-O-1は,その増殖にナトリウムイオンを要求する弱好塩性のグラム陰性菌であり,天然湖水中では24時間以内にコロニー形成能を失う。このコロニー形成能を失ったVibrio anguillarum細胞を使って,アユに対する感染実験を行ったところ,これらの細胞はアユに対して病原性を示さないだけではなく,コロニー形成能も回復しなかった。さらに,本菌を直接湖水に晒すと,呼吸活性も数日で検出できなくなった。これは,本菌の場合,「培養できないが生きている状態(VBNC,viable but non-culturable)」で天然湖水環境で生残しているのではなく,そもそも天然湖水中では生残できないことを意味する。天然淡水域で本菌がVBNC状態で生残している可能性が低いこと,琵琶湖では野生アユのビブリオ病がほぼ毎年発症していること,湖底泥から本菌を蛍光抗体法で検出したこと,これら3つの事実を考えると,コロニー形成能を失わずに本菌が生残できる環境要因をさらに検討する必要性が生じた。様々な物理的・化学的要因について調べたところ,湖底泥の様な,低温・暗所・微好気という条件が整うと,その生残性が飛躍的に向上することが明らかになった。これは、湖底泥から間接蛍光抗体法により本菌を検出した事実を裏付ける。さらに,湖底→湖水中→アユへの感染経路を仲介する役割を担うものとして,日周鉛直移動するヨコエビに注目したところ,夜間に大量のヨコエビが変水層付近に浮上してくることを本研究期間中の2度の野外調査において確認した。そこで,湖水,湖水中の懸濁物,湖底泥,ヨコエビを初めとするプランクトン試料から選択培地と間接蛍光抗体法によりビブリオ属細菌の検出を試みた。その結果,特に懸濁物とプランクトン試料から本菌を検出することに成功した。これは,ビブリオ病の感染経路において,ヨコエビが中間宿主として重要な役割を担っている可能性を示唆するものである。
|
Research Products
(1 results)