1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 純明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (40117479)
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Keywords | アクセス権 / 入会権 / 入浜権 / 田園レクリエーション |
Research Abstract |
本年は、イギリスにおける田園アクセス権の歴史的確立過程につき文献研究を進めるとともに、日本における同種の問題を比較検討するため、瀬戸内における漁業権・入浜権の実態および阿蘇入会地の慣行的放牧利用とレクレーション利用の調整問題について調査・研究を行った。また、1月にはイギリス・レディング大学のコリンズ教授から研究上のレビューを受けるとともに、いくつかのアクセス団体でヒアリング・資料収集を行った。以上の調査で得られた知見は以下のごとくである。 (1) イギリスにおけるアクセス権の確立過程を要約すれば、私的所有地が公共空間として解放されていくプロセスとして把握できる。本年の研究では、イギリス入会地がオープンスペースとして公衆一般に開放されてくる歴史的プロセスを追求したが、そこでは私的大土地所有を公共的観点から常にチェックする社会運動の潮流が存在したことが重視されなければならない。 (2) 日本では入浜権訴訟が、イギリスアクセス権運動と同種の性格を持つ運動であるが、明確な公的権利としてはまだ確立をみていない。運動の歴史的蓄積の差のみならず、わが国における土地(あるいは自然物)所有観念の特質がこれに関係している。所有観の比較史的研究として分析を深めていくのが、次年度の課題となる。 (3) 阿蘇入会地では。放牧利用が低調になるに伴い、放牧地管理が粗放化し一部に資源の劣化が始まっている。レクリエーション的利用を媒介として再度入会地利用の活性化を図ろうとする農民・入会者集団の動きが出てきたことが注目される。
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