1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 純明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40117479)
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Keywords | アクセス権 / 入会権 / 入浜権 / 田園レクリエーション |
Research Abstract |
本年は、イギリスにおける田園アクセス権の歴史的確立過程につき引き続き文献収集とその分析を進めるとともに、日本における同種の問題を比較検討するため、瀬戸内における漁業権・入浜権の実態および阿蘇入会地の慣行的放牧利用とレクレーション利用の調整問題について調査・研究を行った。 (1)イギリスにおけるアクセス権の確立過程を要約すれば、私的所有地が公共空間として解放されていくプロセスとして把握できる。本年の研究では、イギリス入会地がオープンスペースとして公衆一般に開放されてくる歴史的プロセスを追求したが、そこでは私的大土地所有を公共的観点から常にチェックする社会運動の潮流が存在したことが重視されなければならない。 (2)イギリスにおけるアクセス権運動は、本年ついにopen contry全域への包括的アクセス権を容認する段階にまで達した。法案はまだ提出されていないが、その内容と議論が注目される。 (3)日本では入浜権訴訟が、イギリスアクセス権運動と同種の性格を持つ運動であるが、明確な公的権利としてはまだ確立をみていない。環境権と同様、公共信託理論による法的基礎づけが有力であるが、こうした権利が社会的にどう認知されていくかを明らかにするには、わが国における土地(あるいは自然物)所有観念の特質があわせて検討されなければならない。 (4)阿蘇入会地では、レクリエーション的利用を媒介として再度入会地利用の活性化を図ろうとする農民・入会者集団の動きが出てきたことが注目されるが、所有権・入会権・公衆のアクセス権の3者関係をどう位置づけるかが問われている。
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