Research Abstract |
1.代かきによって慣行区ではT-N,T-P,T-COD,SSの濃度が上昇し,透視度が低下した。無肥区では代かきによってT-CODとSSの濃度が高くなった。2.苗箱区では無代かきで被覆肥料を用いたことから,田面水濃度が低く推移し移植前の強制落水量も少なくなり,移植期の表面流出負荷量は慣行区に対してT-NとT-Pで19%,T-CODが20%,BODで93%,SSが21%に減少した。3.成育期においても,苗箱区では追肥,穂肥を施用しないため田面水中のT-N,T-P濃度は慣行区より低く,表面流出負荷量はT-Nで59%,T-Pで49%に留まった。4.苗箱区の稲作期間中の全表面流出負荷量は,慣行区に対してT-N31%,T-P25%,T-COD55%,BOD94%,SS27%に低下した。5.苗箱区の浸透負荷量は慣行区に対してD-N52%,D-P87%,D-COD78%,BOD89%に減少した。6.慣行区では窒素,リン,COD,BOD,SSの全てで汚濁負荷を発生した。苗箱区においては窒素が1.4,SSが25kg/ha浄化され,リンの汚濁負荷量は0.84kg/haで慣行区の35%に留まった。7.苗箱区の草丈はほぼ全生育期間に亘って慣行区よりやや短く,株当たり茎数は初期の増加速度が慣行区よりかなり劣ったが,有効茎歩合が高く穂数はほとんど変わらなくなった。一穂籾数,玄米千粒重および桿長も慣行区とほぼ同等であった。8.苗箱区の籾重,玄米重は慣行区の95%と96%に留まったが施肥窒素量あたりでは苗箱区の方が多く,苗箱区の肥料利用効率の高さが明らかとなった。9.食味計による食味値については苗箱区,慣行区,無肥区ともに大差なかった。官能テストについては苗箱区の評価が最も良好となり,無肥区の評価は慣行区よりも若干低かった。10.苗箱区では窒素の収支が等しくバランスが取れていたが,リンの収支では収入が大きく上回っていたことからリン施肥量削減の必要性が示唆された。慣行区は施肥量過多に伴う収入過多であった。
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