2000 Fiscal Year Annual Research Report
高温環境がニホンウズラに及ぼす影響に関する生理遺伝学的研究
Project/Area Number |
10660275
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渡邉 誠喜 東京農業大学, 農学部, 教授 (20078108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半澤 恵 東京農業大学, 農学部, 助教授 (00181032)
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Keywords | ニホンウズラ / 高温環境 / 肝臓 / 酵素活性 / 熱ショックタンバク質(HSP)70 |
Research Abstract |
実験1 高温環境が肝臓組織に及ぼす影響 38、40および42℃の高温環境下で2週間飼育した成ウズラ雌雄の肝臓組織の脂質および糖質の動態を対照区(26℃)のそれらと組織化学的に比較解析した。脂質染色:対照区の雄ではやや小型の脂肪滴が、また雌では大小様々な大きさの脂肪滴が、細胞質の周辺領域全体に多数観察された。一方、高温処理区では、雌雄ともに処理温度が高いほど細胞質全体に存在する脂肪滴が減少する傾向が認められた。また、40℃区の産卵を再開した雌では産卵を停止した雌に比べて、脂肪滴の著しい減少が認められた。一方、40℃区の産卵を停止した雌および42℃区の雌雄においては、対照区に観察された大型の脂肪滴が消失し、新たに比較的小型の脂肪滴が核の周囲に大量に出現した。糖染色:雌雄ともに38℃区では対照区に比べやや濃染し、グリコーゲンの蓄積が認められた。一方、40℃区および42℃区では対照区に比べて、処理温度が高いほど糖質が減少する傾向が認められ、また、40℃区の肝臓に含有される糖質はグリコーゲンとは異なることが判明した。したがって、ニホンウズラの生理機能は40℃を臨界温度として、それ以上の高温環境下では、脂質合成の減退・停止、糖代謝の変化など生理的恒常性の維持機能が破綻することが示唆された。 実験2 熱ショックタンパク質(HSP)70の遺伝子解析 昨年度単離した2つのニホンウズラHSP70:CJHSP70AおよびCJHSP70Bの塩基配列およびアミノ酸配列を他の生物種のそれと比較解析した。その結果、CJHSP70Aのアミノ酸配列はニワトリHSP70のうち熱ショック応答が確認されているJ02579と98%の相同性を有し、一方、CJHSP70Bのアミノ酸配列はニワトリHSP70のうち非ストレス時に発現するAJ004940と99%の相同性を有すること、並びにこれらニホンウズラおよびニワトリのHSP70は、哺乳動物のHSP70ファミリーの中では、MHC class III領域に座位し、熱ショック応答に関わるHsp70サブファミリーより、非ストレス時にも定常的に発現しているHsc70サブファミリーにより近いことが示唆された。
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