Research Abstract |
本年度は.サル後部帯状皮質の一部で脳梁膨大の下に位置する尾内側小葉(CML)と,CMLに隣接する23野および29/30野との視床皮質投射ならびに皮質視床投射を比較することによって,CMLの領野区分を明らかした. まず,視床皮質投射を比較検討するために,CML,23野,29/30野に逆行性トレーサーである小麦胚レクチン結合過酸化酵素(WGA-HRP),蛍光色素,コレラ毒素Bサブユニットを注入し,それぞれの領域に投射する視床皮質投射ニューロン逆行性標識した.CML注入例では,標識細胞は主として注入と同側の,視床前核群,背外側核,外側腹側核,視床枕内側核に見られた.23野注入例でもほぼ同様の視床核に標識細胞が出現した.一方,29/30野注入例では,標識細胞は,視床前核群には多数見られたものの,背外側核および視床枕内側核には比較的少数の標識細胞がみられたのみで,それ以外の核にはほとんど標識細胞は見られなかった. 次に順行性トレーサーであるWGA-HRPあるいはビオチン化デキストランを,CML,23野,29/30野に注入し,それぞれの領域から起始する皮質視床線維の終末を順行性標識した.CMLにトレーサーを注入した例では,順行性標識終末は主として注入と同側の,視床前核群,背外側核,外側後核,視床枕内側核に見られた.23野への注入例でも標識終末は同様な領域に見られた.29/30野に注入した例では,標識終末は,主として視床前核群,背外側核,視床枕内側核に見られたが,背外側核と視床枕内側核の標識終末はより限局して分布していた. 以上の実験結果から,CMLの視床皮質投射の起始細胞の分布と皮質視床投射の終末分布は23野のそれと類似し,29/30野からのものとは異なることがわかった.このことは,CMLは23野の一部であると見なせる可能性を示唆する.
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