2000 Fiscal Year Annual Research Report
感染免疫における腫瘍壊死因子(TNFα)の機能解明:TNFα遺伝子欠損マウスを用いた感染病態発生機構の解明
Project/Area Number |
10660282
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
谷口 隆秀 東京農工大学, 農学部, 講師 (70282803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関川 賢二 農林水産省, 家畜衛生試験場・生体防御部, 部長(研究職)
町田 登 東京農工大学, 農学部, 助教授 (20219364)
本多 英一 東京農工大学, 農学部, 教授 (20109507)
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Keywords | TNFα / コロナウイルス / マウス肝炎ウイルス / 肝炎 / サイトカイン |
Research Abstract |
コロナウイルスは、その株により消化器系・呼吸器系・肝臓・脳神経系など様々な組織に親和性を示すが、株間でのトロピズムや病原性の相違の原因となる機構は明らかではない。コロナウイルスに見られる株間での病原性の相違における分子生物学的基盤を明らかとするために、TGEV(ブタ伝染性胃腸炎ウイルス)強毒株およびワクチン株9株のS蛋白遺伝子およびORF3・3-1・4領域、ORF7領域のRT-PCR・RFLP解析を行ない、さらに同領域の塩基配列を決定し比較した。その結果、日本で1957年から現在まで流行したTGEVは大きく2つのグループに型別されることが明らかとなった。また、これまでの報告で病原性に関与していると考えられていたORF3・3-1・4領域の遺伝子欠損は病原性に直接関与しないこと示唆する結果が得られた。 マウス肝炎ウイルス(MHV)は、株により急性の激症肝炎・慢性肝炎・脳脊髄炎・脱髄など様々な病態を示し、これらの病態発生には宿主側の免疫系の影響、特にTNFαやIL-1βなどの炎症性サイトカインの関与が示唆されている。マウスに致死的な激症肝炎をおこすMHV-3株を用いて、TNFα遺伝子欠損マウスに対して感染実験を行ったところ、対照であるC57BL/6マウスと比較し、生存日数・生存率に明らかな差が認められた。肝臓でのウイルスの増殖には両系統間で有意差は認められず、ウイルスの増殖による直接的な肝細胞の破壊が劇症肝炎の病態形成に関わっていることは否定された。TNFα遺伝子欠損マウスでも感染後死亡するマウスが見られ、また詳細な病理学的検索の結果、両系統とも肝細胞のアポトーシスが同様に認められたことからTNFαは劇症肝炎の病態発生に重要な役割を果たしているもののTNFα以外の要因が存在することが示唆される結果となった。
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