1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660298
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉山 芳宏 理化学研究所, 先端技術開発センター・専門職研究員(研究職) (10187685)
|
Keywords | 病原性大腸菌 / O157 / 野ネズミ / 疫学調査 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌は、近年のヒト集団感染事例からも食品衛生学的に注目されるに至ったが、ネズミを始めとした野生動物等の疫学的データは不足していると考えられる。そこでヒトや家畜に最も密接な野生動物であるネズミを対象とした腸管出血性大腸菌の疫学調査を3年間かけて実施することを計画した。 野ネズミを畜産農家およびと畜場付近で定期的に捕獲後、菌分離用に糞便採取および調査地域近辺の河川水のサンプリングを実施した。野ネズミは合計35匹捕獲することができた。同時に畜産とは無関係な山地でも野ネズミ108匹(昨年と変らず)を捕獲した。捕獲した野ネズミと河川水から病原性大腸菌の分離を行った結果、山地で捕獲された野ネズミ5匹(4.6%)から家畜関連地域で捕獲した野ネズミ2匹(5.7%)より病原性大腸菌様の菌株が得られた。ただし、腸管出血大腸菌の代表的血清型O157は昨年まで分離されていなかったが、今年度野ネズミより1例分離された。現在、H抗原の決定、および毒素産生、毒素産生遺伝子の保有について検査中である。また、他の病原性大腸菌株はPCRでは本菌毒素産生遺伝子が検出され、VT1毒素を産生していることが確認されたが、血清型の同定には至っていなし。その他、PCRでは典型酌、また明瞭な反応はなかったものの、毒素検出ラテックスで反応が認められる株などが存在することから、さらに分離大腸菌の血清型確定と毒素産生性について検討をしている。加えて、糞便および河川水のサンプルから病原性大腸菌を分離する上でサンプルの塩酸処理は他の雑菌発育を抑制し、大変有効な方法であることが確認できた。今後も残り1年間で研究計画に沿って分離菌株数を増やし、遺伝子レベルの比較により疫学データを蓄積する予定である。
|