2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10660298
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Research Institution | RIKEN INSTITUTE |
Principal Investigator |
杉山 芳宏 理化学研究所, 先端技術開発センター・専門職研究員(研究職) (10187685)
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Keywords | 病原性大腸菌 / 野ネズミ / 環境 / 疫学調査 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌は、近年のヒト集団感染事例からも食品衛生学的に注目されるに至ったが、ネズミを始めとした野生動物等の疫学的データは不足していると考えられる。そこでヒトや家畜に最も密接な野生動物であるネズミを対象とした腸管出血性大腸菌の疫学調査を3年間かけて実施することを計画した。 野ネズミを畜産農家およびと畜場付近で定期的に捕獲後、菌分離用に糞便採取および調査地域近辺の河川水および牧場の土などのサンプリングを実施した。野ネズミは合計273匹捕獲することができた。捕獲した野ネズミと河川水から病原性大腸菌の分離を行った結果、山地で捕獲された野ネズミ211匹中3匹(1.4%)から家畜関連地域で捕獲した野ネズミ62匹中1匹(1.6%)より病原性大腸菌の毒素産生菌株が得られた。昨年野ネズミより1例分離された腸管出血性大腸菌の代表的血清型O157は半流動培地で運動性が認められるがH抗原の決定には至らなかった(H:7ではない)こと、および毒素産生および毒素産生遺伝子は確認されなかったので病原性大腸菌ではないと結論づけた。また、他の病原性大腸菌株はPCRでは本菌ベロ毒素産生遺伝子が検出され、VT1毒素を産生していることが確認されたが、血清型の同定には至っていない。加えて、土、河川水のサンプルから効率のよい病原性大腸菌を分離する方法を検討し、実施したが環境からの病原性大腸菌の分離は出来なかった。また、実験的に土に病原性大腸菌を接種してその存在期間を調べた。結果として3ヶ月以上生存することから、牛の糞便などに含まれる大腸菌が、土中でもかなり長く生残して、牧場の汚染を継続させるであろことが示唆された。しかし、実践では牧場の土壌からも本菌の分離は出来なかった。環境から菌は分離されていないが、野ネズミからは分離できた。さらに、O157は分離できなかったが、抗体を保有している個体もあることから、野ネズミでの本菌の保有も有り得ることを明らかとした。
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