2000 Fiscal Year Annual Research Report
エポキシ環を有するシャクガ科昆虫性フェロモンの生産制御と受容機構の解明
Project/Area Number |
10660315
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
安藤 哲 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 教授 (50151204)
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Keywords | フェロモン / 性フェロモン / 鱗翅目 / シヤクガ / 生合成 / エポキシ化酵素 / 基質特異性 / 重水素標式前駆体 |
Research Abstract |
クワエダシャク(Menophra atrilineate)の雌成虫は、性フェロモンとしてC18の9,10-epoxy-3,6-diene(I)と9,10-epoxy-6-ene(II)を10:1の比率で分泌する。それらはC18の3,6,9-triene(III)や6,9-diene(IV)が前駆体となり、エポキシ化酵素による酸化にて生合成されることを応動昆43回大会にて報告した(第3報)。ところで、2成分の量比は雄蛾の誘引に重要な役割を担っているが、その割合が生合成の過程でどのようにして決定されているのか不明であり、今回エポキシ化酵素の特性に注目し検討を加えた。 まず、リノレン酸やリノール酸から合成された重水素標識前駆体IIIとIVを、2:1、1:1、1:2の割合に含むDMSO溶液を調製した。羽化2日目の処女雌にPBANを注射しフェロモン産生を活性化させた後、それらの前駆体混合物をフェロモン腺に塗布した。その抽出物をGC-MS分析したところ、内生のフェロモン成分IとIIは天然の存在比で含まれているに対して、重水素化されたIとIIは処理した前駆体の濃度比に近い割合で存在していた。本種の性フェロモン生合成には単一のエポキシ化酵素しか関与していないとすると、成分比は前駆体である不飽和炭化水素の量によって規定されていることが考えられた。またC17の3,6,9-trieneも対応するエポキシ化物ヘと変換されることがわかり、エポキシ化酵素の基質特異性をさらに明確にすべく、種々の化合物の変換を調査中である。
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